衰えた身を支えつつ、田舎で暮らす老親は、物理的には紛れもない「弱者」。現役時の稼ぎをしこたま蓄える彼らは、犯罪者たちの格好の標的になっている。
金庫の前に鍵を置きっ放し
高齢者が犯罪の餌食になる傾向が年々強まっている。それを裏付けるように、刑法犯被害における高齢者の割合は年々増加の一途だ。内閣府が毎年出している高齢者の刑法犯被害認知件数(高齢社会白書)では10年前の9.2%に対し、直近で13.4%。100人のうち13人が高齢者だ。
高齢者が巻き込まれる犯罪の最新の傾向を、捜査関係者はこう指摘する。
「2014年、前橋市で20代の男が金品目的で80代と90代のお年寄りを連続して包丁やバールで襲い殺害した事件は、明らかに抵抗力の弱い高齢者だけをターゲットにした犯罪だ。犯人は検挙され、検察は最弱者を狙う犯罪を重大視、死刑を求刑した」
しかし、最近は高齢者を標的に、新たにとんでもない手口が増えている。
「超高齢化社会の到来に加え、最近は人手不足。そのため最近の高齢者は70代でもバリバリ第一線で働いたり、あるいは中小零細企業経営トップとして頑張る人が増えている。そういう人たちは小金を持っている。加えて銀行は超低金利で、銀行に預金していても増えないし、日銀のマイナス金利政策の“マイナス”というネーミングへの心理的抵抗が大きい。そのため零細企業者の間では銀行預金をやめてタンス預金に切り替える人も多い。そこを狙う手口が増えている」(捜査関係者)
つまり、(1)第一線で働く有能な中小零細企業者が増えた、(2)そうした人たちはそこそこの小金持ち、(3)日銀のマイナス金利政策のあおりでタンス預金増、(4)小金持ちの高齢者も核家族化で夫婦のみの生活――こうした環境下で、犯罪者たちがシニア富裕層を狙った犯罪をエスカレートさせつつあるのだ。