フェイスブックを圧倒、ダントツに長い滞在時間
微信に関して最も驚かされるのは、中国のあらゆることがそうであるように、その急速な成長だ。微信は中国版のワッツアップに過ぎないと一蹴する人もいるし、中国人でなければ、そのサービスの名前を聞いたことがない人が多いかもしれない。
それでも、月間のアクティブユーザー数は9億3800万人で、アメリカはもとより、ヨーロッパの全人口をも上回る。
ワッツアップは世界に12億人以上のユーザーがいる。フェイスブックのユーザー数は20億人以上だ。しかし、微信のユーザーの3分の1は1日あたり4時間以上を微信に費やしており、ジュリエットはその点にこそ注目してほしいという。
これに対して、フェイスブックにユーザーが費やす時間は1日平均35分、スナップチャットでは25分、インスタグラムでは15分、ツイッターでは1分だ。
微信はどのようにしてそれほど多くのユーザーを獲得し、それほど長い時間アプリに引き付けていられるのだろうか。微信はエンドユーザーが創造力を発揮できるようにした。しかも、微信はそれをきわめて中国的な方法で行った。
すなわち、同社はユーザーの体験に力を入れただけでなく、サードパーティが新たな機能をつくれるように、新たなツールの開発にも力を注いだのだ。
どの企業も欲しがる顧客データを蓄積しない
オンラインの世界にはいまだにデコボコした世界で、閉鎖的なコミュニティや閉じられた空間がある。たとえば、中国政府は長年、疑わしいと思われる海外のウェブサイトを追い払ってきた。
「グレート・ファイアウォール」として知られる、インターネットに関する取り締まりや、謎めいた検閲などが広く行われているため、中国ではグーグルやツイッター、ユーチューブ、フェイスブックをインターネット上で見つけることはできない。
中国では、多数のアプリが最初はどこか西側のアプリに似ているが、やがてまったく違うものに進化していく。
西側の企業はモバイル広告に慣れ親しんでいる。フェイスブックやグーグル、ツイッター、スナップチャットなどは、大量のユーザーのデータを集めて、強力なアルゴリズムをさらに磨き上げ、広告主がよりターゲットを絞って広告を打てるようにしている。
しかし中国では、ユーザーのデータを蓄積することには大きな政治的なリスクが伴う。したがって、インターネット企業は広告主経由ではなくユーザーに直接おカネを払ってもらうことを選んだ。
取引手数料を課すか、アプリ内で何かを購入してもらうのである。顧客がサービスに対して直接おカネを払ってくれるのであれば、データマイニングをする必要はない。