劇症型心筋炎から生還した山本陽一さん

心臓突然死の寸前まで行ったが、奇跡的に生還した人もいる。テレビドラマ「夏・体験物語2」「季節はずれの海岸物語」「水戸黄門」などで活躍した俳優の山本陽一さんは、スポーツバラエティ番組「筋肉番付」に出演するほどの健康体だった。

2009年(当時40歳)、4歳の娘さんの風邪が伝染し、かかりつけの病院で診てもらっていたが良くならなかったそうだ。「呼吸困難」「悪寒」「38度超の熱」といった症状に加えて、心臓の鼓動リズムの変調が自覚できた。自分で車を運転して、市民病院に飛び込んだところ「劇症型心筋炎かもしれない」と、救急車で大学病院に転院させられたそうだ。大学病院では一時生死の境をさまよったが、集中治療室の高度医療によって一命を取り留めた。

しかしながら、心臓の機能が完全回復することはなく、その後も投薬治療や運動制限が必要となったため、2012年に芸能界を引退した。山本さんはその後、実家の金属加工業を継いでいるが、メディアで心筋炎や闘病経験についても公表している。

いわゆる「風邪」と「心筋炎の初期」は鑑別が困難

急性心筋炎とは、「心臓を動かしている筋肉(=心筋)にウイルスが感染して炎症を起こし、心臓が動かなくなる病気」であり、これによる死者は10万人あたり年間115人という報告もある。典型的な初期症状は、「せき」「発熱」「筋肉痛」「全身のダルさ」「吐き気」などであり、悩ましいことに「よくある風邪」との区別が困難である。

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しかしながら急性心筋炎、特に、「劇症型心筋炎」と呼ばれるタイプは病状の進行が早い。全く健康だった若者が、「カゼかな?」と思った数日後には危篤状態まで増悪することもある。心筋症と確定されてはいないが、前出の松野莉奈さんのように、数時間で心停止に至るケースもあり、医師にとっても対応困難な怖い病気のひとつである。

山本陽一さんは、駆け込んだ市民病院で、たまたま出向していた専門医に巡り合えたので、「コレは単なる風邪じゃない!」と救急車搬送されて一命を取り留めたそうだ。しかし、全ての「風邪っぽい」患者を心臓専門医が検査することは現実的に不可能なので、現状、心筋炎=「助かればラッキー」的な難病だと言える。