地方での医師不足の切り札として医学部入試の「地域枠」の導入が進んでいる。麻酔科医の筒井冨美氏は「医師免許取得後9~11年間、指定された地域で働くという縛りがあるため倍率が低い。返済不要の奨学金が支給される場合もある。ただし合格にはコツがいる」という――。
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医師免許は、取れば一生食っていくのに困らない「プラチナ国家資格」。その取得プロセスの第一歩となる医学部受験の人気は、一時のピークは越えたものの、依然、過熱状態が続いている。

とりわけ国公立大の医学部は大激戦だ。これは私立大医学部が6年間で2000万~4000万円の学費を覚悟しなければいけないのに対し、国公立なら350万円程度と極めてリーズナブルだからだ。とりわけ首都圏の国公立医大は超難関となっている。

地方医師不足対策の切り札は「地域枠入試」

昭和時代にはドラマ「白い巨塔」のように、若手医師は母校の附属病院に就職して、就職当初から「外科」「精神科」などの医局に属して研修することが当たり前だった。それが、2004年度から始まった「新研修医制度」によって、医師免許取得後2年間は「内科4カ月→小児科2カ月→精神科1カ月……」などと多数の専門科をローテーションしながら総合的な研修を行い、その後に専攻科を決めることになった。

2018年度からは、卒後3年目以降の専門科研修についても、厚労省の外郭団体である「日本専門医機構」が厳しく監督するようになった。この新制度導入で、症例数や指導医が多く生活が便利な東京都内の病院が大人気になり、一期生の22%が東京都に集まった。

逆に、この新制度導入により地方の医師不足はますます顕著になり、「群馬・山梨・高知県で外科医1人(東京177人)」や「徳島・佐賀県で小児科医0人(東京130人)」とさらに悪化してしまった。※参照:一般社団法人 日本専門医機構「専攻医の採用状況について」別紙1参照 

こうした深刻な地方医師不足対策の切り札が「地域枠入試」である。