AI革命でも雇用を守れるかどうかは不透明

同じようにAI革命でも雇用を守れるのか。

ME革命の時代を知るグローバル産業雇用総合研究所の小林良暢所長はAI時代には昔のやり方は通用しないと語る。

「一番の違いは、当時は技能訓練をすれば職転・配転ができましたが、この30年の間で日本の産業の比較優位が劣化し、企業内労働市場で雇用を維持する余力を失っていることです。2番目は会社が職務訓練や技能転換教育を行っても社内の部署自体がAI化の影響でなくなり、訓練しても仕事がなくなる可能性もあります。3番目は労働市場の違いです。当時は正社員や期間工が大半を占めていましたが、今は製造業からサービス業に産業もシフトし、非正社員も増加している。AIなどデジタル技術の進化によりプラットフォームビジネスで働くクラウドワーカーなど、いわゆる雇用フリーの労働者が増えつつあります。労働市場の地殻変動が進行する中で雇用を守るにはMEの時代とはまったく異なる対策が求められます」

真っ先に仕事を奪われるのは、ルーティング業務を担う非正社員か

雇用フリーとは、インターネットの仲介サイトを通して仕事を請け負う個人事業主的働き方である。「ギグワーカー」とも呼ばれる。

仲介サイトを運営するプラットフォーマービジネスとしては、アメリカの配車サービス大手のウーバーテクノロジーズが有名であるが、日本でも飲食店の宅配代行サービスのウーバーイーツを展開している。その他にもプログラミング、ライター、家事代行などの仕事を請け負う人も増えている。

写真=iStock.com/Joel Carillet
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こうしたギグワーカーもAIなどのデジタル技術革新によって生まれた働き方であるが、欧米では低賃金や雇用の不安定さが大きな社会問題となっている。アメリカではAIなどのデジタル技術の進展で仕事を奪われた非正社員や事務などの一般職の人たちが、移民と同じような低賃金の仕事に従事したり、ギグワーカーとなったりするケースも多いという。それによって生まれるものは、さらなる経済格差の進行だ。

日本はアメリカほどデジタル化が進んでいないが、真っ先に仕事を奪われるのは、RPAに代替されてしまうルーティン業務である。

ルーティング業務を担う非正社員は多く、今では雇用労働者の約4割、2000万人超の非正社員が存在する。さらにルーティン業務に従事する正社員、非ルーティン業務でもタスクを束ねることで不要な人間が発生する可能性もある。

もちろんそうならないために、企業は必要とされる新しい商品やサービスを生み出して雇用を維持していく必要がある。また、国もAIによって仕事を奪われた人たちの再教育による産業間の移動の支援や、その間の生活支援などセーフティネットの構築を急ぐべきである。

AIの進展による雇用への影響は今のところ顕在化してはいないが、放置しておくと、遠くない時期に社会問題化してくる可能性もある。

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