チームワークを高める色は
照明にも色があるが、普段、私たちが目にするのは物体の色のほうだろう。実は仕事中に見ると能率を「上げる色」と「下げる色」がある。
最も避けたい色は白。白1色の環境で作業すると「仕事の速度」にマイナスの影響があり、多くの「エラー」が発生するという研究報告がある(バンコクのモックット王工科大学ラートクラバン校の論文分析)。色彩専門家で住環境のカラーコンサルティングも手がける南涼子氏(日本ユニバーサルカラー協会代表理事)は「とにかく職場に色を取り入れることが大事」と話す。
「無彩色、色がない仕事場が一番良くないんです。色は大脳で認識され、感情の中枢である『扁桃体』や、ホルモンの分泌を促す『視床下部』を刺激する。白は脳に刺激がない状態で、創造性に大きなマイナスです」
色彩豊かな環境で仕事をするとポジティブな影響があることは数多くの報告がある。職場ならパーテーションやブラインド、パソコンの画面、デスクマット、椅子などに色を取り入れやすいのではないだろうか。
カナダのブリティッシュコロンビア大学では6つの課題について600人以上の参加者のパフォーマンスを追跡した。実験はコンピュータで行われ、画面は赤、青、白だった。その結果、赤の画面になると記憶の検索や細かい作業のパフォーマンスが青に比べて31%も向上。逆に、ブレーンストーミングのようなタスクでは青い環境下のほうが創造的なものが生み出されやすかった(米科学誌「サイエンス」電子版より)。
「赤は闘争ホルモンといわれる神経伝達物質アドレナリンの分泌を促し、沈みがちな気分を高揚させて積極性を高める作用がある。脳の興奮レベルを上げ、筋肉を強めて“覚醒”を促します。さらに赤は停止信号や救急車、危険を連想させるため、注意力を必要とされる業務の効率を上げるのでしょう」(南氏)
また別の研究で、大学生の学習パフォーマンスについても、鮮やかな赤の空間で勉強すると課題成績が良かったという報告もある。
「一方で青は沈静色という作用を持ちます。精神を安定させ、海や空、つまり“自由や開放”を連想させるため、創造性を高めると考えられます」(同)
そのため前出のカナダの研究結果には〈新商品の開発会議は青色の部屋で行えばいい〉と記されている。反対に赤を使えば消費者は製品の細部により注目してくれると予測されるため、〈広告や医薬品の注意書き、オフィス教室などの環境デザインで赤を活用できる〉としている。
ただし、赤や青は「体感温度」にも影響するため、夏に赤などの暖色系ばかり見れば暑苦しく感じるし、冬に青っぽい室内にいると一層寒くなる恐れがあることを知っておこう。