一方でオフィスでは18度では手足が冷えやすいため、「21度くらいを目安に」(同)したい。足元が冷えると自律神経が乱れ、集中力の低下を招くという。
「職場では天井から温風が出るため、足元が暖まらないんです。私たちの研究で冬場は男性より女性のほうが影響を受けやすいことがわかりました。おそらく基礎代謝が関係するのでしょう。女性は足元が室温マイナス2度低いだけで計算の成績が低下したんです」(同)
自宅もオフィスも冬に冷気がたまりやすいのは断熱性能の低い建物だ。断熱とは文字どおり、冬に外へ逃げていく“熱を断つ”こと。日本の住宅では壁の中の柱と柱の間に断熱材を詰めるケースが多いが、断熱材の「質と厚み」により断熱のレベルが変わるのだ。冬場は窓から熱が逃げやすいため、自宅では内窓をつけたり、窓に断熱シートを貼ると暖房効果が高まる。職場なら窓側にヒーターを置いたり、厚手のソックスを履くなどの防寒対策をしておきたい。
湿度40%未満は、眠気・やる気の低下に
しかし、冬場に暖房をしっかりかけると、次に気になるのが乾燥だ。日本のオフィスビルなどの建築物を対象にした環境衛生管理に関する法律(建築物衛生法)では「湿度40%以上70%未満」が定められている。だが職場で「乾燥」を感じる人は多いのではないだろうか。実際、大型加湿器が設置されていないと湿度40%以上を保つことは難しい、と複数の専門家が指摘する。理由は2つで、暖房をかけるほど湿度が低下するということ、もう1つは規模が大きいオフィスビルほど湿度が低い外気が常時室内に入ってくるためだ。
特別養護老人ホームで働く介護職員を対象にした国内の研究がある。その老人ホームは入居者の個室には加湿器があるものの、共有スペースにはなく、しかし最近になって順次導入しているという状況であった。同じ施設内に「湿度40%以上の湿潤エリア」と「40%未満の乾燥エリア」が存在するということだ。
すると乾燥エリアで働く職員は、まばたきの回数が増加し、眠気とだるさを訴える率が上昇した(図C)。研究を実施した伊香賀氏が語る。
「することに間違いが多いと自覚する割合が高いのです。まばたきが増えることで視覚情報が少なくなり、ミスが増えた可能性があります。また低湿度環境下では口の中が乾燥することが増え、のども痛くなり、風邪気味の傾向が増えてくる。血流量が減少し、脳への血液循環もうまくいかず、意欲が低下するのでしょう」
加湿器には種類があるが、自宅でエアコンと併用する場合は運転コストが安価な気化式加湿器がお勧めだ。ただしフィルターにカビが生えやすいため、こまめな清掃を。ちなみに睡眠時に室内が乾燥していると中途覚醒やいびきをかく確率が高まり、睡眠の質が低下することが明らかになっている。寝室の湿度も要確認だ。