ミスを減らして、仕事の効率を高めたい。集中力や記憶力を上げたい。そんなときに着目すべきなのが、実は仕事場の環境だ。換気量、温度、湿度、照明など、ほんの少しの工夫で大きな差がつくことがわかってきた。

仕事の能率や暗記力、論理力に影響

WHO(世界保健機関)が2018年11月、「冬の住宅室内は“18度”以上」を強く勧告した。寒い室内は「脳神経の質」を低下させ、自律神経を乱し、集中力低下を招くことが慶應義塾大学理工学部の伊香賀俊治教授らの研究でもわかっている。

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室温以外にも「働く場」の湿度、空気、色が仕事のパフォーマンスに大きな影響をおよぼす。東京大学名誉教授の村上周三氏(建築環境・省エネルギー機構[IBEC]理事長)の研究では、室内の換気量が多いほうが論理系、暗記系テストの成績が向上することも確かめられた。海外の研究では室内に古いカーペットを持ち込むと、その部屋で作業をする人の能力が著しく低下したという報告もある。「湿度」や「室内の色」は、仕事への意欲や、ミスの回数に関係することも確かめられている。

国土交通省は19年度から、労働者の健康増進、知的生産性が向上するオフィスを「ウェルネスオフィス」として認証する取り組みをスタートした。仕事場の環境でも、自らの手で改善できる部分は少なくない。本記事では国内外の最新研究をもとに、読者が自ら改善できる「室内環境」に着目する。