昼は青い光、夜はオレンジ色の光
睡眠といえば、照明の使い方でもその質が変わる。夕方以降はできるだけ光を浴びず、照明を使う場合も暖色系のものがいい。体内時計を動かしにくいという報告があるのだ。
17年にノーベル生理学・医学賞の受賞理由にもなった「体内時計」は、仕事の能率に大きく関わる。
ここで簡単に説明しよう。
体内のあらゆる臓器には時計遺伝子が刻む「細胞時計」が存在する。地球の自転に合わせてほぼ24時間のリズムを刻んでいるのだが、これを体内時計と総称する。その仕組みに詳しい明治大学農学部の中村孝博准教授が補足してくれた。
「朝になると体温や血圧が上がって活動の態勢に入り、作業効率がアップして、さまざまな記憶力も良くなります。そして暗くなると睡眠ホルモンが分泌されて眠りに落ちる。私たちが必要な時間にベストパフォーマンスを発揮できるように、体内時計は調整してくれているのです」
しかし体内時計はいつも正確な時を刻んでいるわけではなく、人では平均して24時間より少し長い周期になる。そのため、毎日時計の針を24時間に合わせる調節(リセット)が必要で、それは光(主に朝の太陽光)によって行われる。
「そのため活動したい日中の光の浴び方が足りなければ、体内時計がスムーズに時刻合わせができません。一方で夜に日中と勘違いさせるような光を浴びると、体内時計が誤作動を起こす要因となります」(中村氏)
体内にはさまざまな細胞時計があると述べたが、その司令塔(=中枢時計)が脳に存在する。中枢時計が光を感じて時計を合わせると、臓器などに存在する時計遺伝子(末梢時計)へ神経やホルモンを介して時刻情報を伝える仕組みだ。“大本”が狂うと、体は起きているが、中身は起きていない状況になりやすい。
「海外出張で時差ボケを起こさないためには光を意識すること。短期間の出張なら現地の光を浴びすぎないほうがいい。現地の環境に合った体内時計になってしまいますからね。反対に数週間におよぶ長期出張なら現地の光をしっかり浴びて、体内時計を早く現地時間に合わせたほうが、頭が冴えた状態になります」(同)
網膜にはさまざまな色の波長が届くものの体内時計のリセット効果が高いのは「青い光」。反対に、体内時計を動かしにくいのは暖色系の光。中村氏らの研究で、ブルーライトカットを施したものは体内時計に与える影響が半分になることも判明した。夕方以降に働くならば暖色系の光のもとか、ブルーライトカットを施した照明やパソコンで作業するといい。