また、リラックスルームなど心身を癒やしたい場所は「緑」がいい。

「緑は、自然に目のピントが合い、見るのに余分な力を必要としません。筋肉を弛緩させて緊張を解きほぐし、精神安定にも役立ちます」(同)

本記事冒頭で紹介したウェルネスオフィスの1つとして、国土交通省が紹介するオフィスのリフレッシュルームにも「緑化された空間」「自然を取り入れる」と記載されていた。

回復には緑、もう少し元気で快活に、職場の仲間と軽い打ち合わせなどに用いるなら、黄色やオレンジを。集中したい場所では「おしゃべりが増える」というマイナス点があるため、あまりお勧めできないが、チームワークが必要だったり、心理的距離感を近づけたい場所には向いている色だ。同じように、オレンジや黄色系の洋服を身に着ければ、初対面でもその人に親しみがわく。ちなみにビジネスでの交渉やプレゼンなどの場で身に着けるなら「赤」。南氏によると「相手に力強い印象と威圧感を与え、物事を有利に進められる」という。男性ならネクタイ、女性ならインナーなど“顔の近く”で身に着けると効果的だろう。

大切な会議や試験前にすべきこと

前項でリフレッシュルームの「色」を紹介した。それでは次に、その間の「過ごし方」はどうだろう。

知る人も多いと思うが、日本の仕事中の座位時間は世界1位だ。長時間座っていることで血糖値が上昇するなど健康に悪影響を及ぼすことがわかっている。したがって休憩時間も体を動かすほうが良さそうだと予測できるが、そのとおり、実際に研究結果でもそれが示されている。

慶應義塾大学の伊香賀研究室では男子学生を対象に、「自席(座位)休憩」群と「歩行・立ち休憩(身体活動)」群に分けて調査を行った。休憩時間は作業と作業の合間の15分。すると休憩後の作業時の「眠気」が、踏み台昇降などの身体活動群では約13%だったのに対し、座位休憩は約38%と高率であった(図E)。

伊香賀氏は「身体活動によって交感神経が活性化され、覚醒をもたらす」と分析する。

身体活動は子供の学習効率にも良い影響を与えることがわかっている。ハーバード大学医学部の研究では、米国イリノイ州203学区の高校生を対象に登校後10分間のランニングを実施させた。その後に勉強させると、生徒の成績が17%向上したという。ランニングにより、最大心拍数が75~90%となり、脳血流が増加して脳が活性化したためとみられる。

また、よく「運動のできる子は勉強の成績も良い」などといわれるが、事実、体力と学力は比例する。国内の小学生の学力テストと体力テストの成績を伊香賀研究室で分析すると、やはり体力テストの成績が良い地域ほど学力テストの結果が良い。ただし、また別の調査方法で調べると、日常的に活発な子供は朝に身体活動を行うことで学習効率が向上する一方で、もともと活動量の少ない子供が朝に突然運動をするのはかえってその後の学習効率を低下させる傾向もある。

「日頃活動的でない生徒にとっては学習効率がほぼ変わらず、むしろ運動をしたあとのほうが低めの傾向にあります。体力がないため、学習前に運動をすることで疲れ気味になってしまうのでしょう」(伊香賀氏)