都民ファーストの会東京都議団としても検証プロジェクトチーム(PT)を立ち上げ、札幌案でかかる追加経費について340億円という独自の試算を打ち出した。それまで沈黙を余儀なくされていた選手や競技関係者の声も伺い、IOCが主張する「アスリートファースト」との乖離も指摘した。
さらに、沿道自治体(千代田区、港区、新宿区、中央区、台東区、渋谷区)選出の都議も出席し、路面温度を緩和する遮熱性舗装などハード面の準備についてはもちろん、街並みを生中継で世界へ発信する機会が失われてしまうことによる観光産業への打撃といった、ソフト面の損失も明らかにした。
小池知事が攻勢に転じたのと同じく25日の朝、急きょ都議団も記者会見を設定したが、きちんと取材し報じてくれた都庁記者クラブの各社には心から感謝したい。
なお、毎日新聞が26日~27日にかけ行った全国世論調査によると、東京五輪の猛暑対策としてIOCが示したマラソンと競歩の会場を札幌市に移す案について、「支持する」は35%にとどまっている。「支持しない」は47%と半数近く、無回答も18%あった。五輪で人気の高いマラソンが東京で行われないことに、国民からは一定の不満が出ている。
もはや足の引っ張り合いをしている場合ではない
都民世論は思った以上の盛り上がりを見せており、高い関心と期待を集めているというのが率直な感想だ。しかし当然、それだけで結果がついてくるわけではない。
まずは30日に都内で開かれる調整委員会に向けて、IOCや組織委への働きかけを行っていく必要がある。意見書の決議や共同談話はじめ、オフィシャルもアンオフィシャルも含めて方法はいろいろあるが、共通することは「オール東京」で臨まなければならないということだ。もはや足の引っ張り合いをしている場合ではない。
昨年、地方自治体との偏在是正の名の下に都の税金が1兆円近く奪われてしまった税制改正論議の際にも、都民ファーストの会は「オール東京」を呼びかけた。小池知事には小池知事の、都議会各会派にもそれぞれのやり方があり、パイプがあった。それらをフル活用し一丸となれば、大きな力を発揮できたはずだ。
しかし当時、都議会自民党は知事の責任追及や他会派の批判、自らの手柄のアピールに終始。足並みはそろわなかった。今回も似たような構図があるが、同じ轍を踏んではならない。
それぞれがそれぞれの立場で、できることは全てやる。東京大会の成功、ひいては都民のために「オール東京」で臨む。綺麗事ではなく、これが問題解決への最善策であり、都議会に求められる態度ではないだろうか。