論文を検索して、最新の学術情報に接することもできるし、海外の大学が公開している授業を受講することもできる。お気に入りの音楽はもちろん、落語や、本の朗読を聴くこともできる。
生産性を上げるツール
案外見落とされがちなのは、生産性を上げるツールとしてのスマホの可能性である。
メッセージやメールなどの短いテクストならば、スマホで打つのはごく当たり前である。最近では、大学生などはスマホでレポートを書いて提出してくるという話も聞く。
長い文章も、スマホで書くことができる。しばらく前に、『しんせかい』で芥川賞を受けた山下澄人さんが、スマホで作品を書いたと発言して話題になった。電車の中でも、寝転がっていても書けるので、便利だという。
山下さんのケースが興味深いのは、芥川賞という「本格派」とスマホが結びついたことである。スマホで芥川賞なんて、と驚く人は、スマホという「道具」についての固定観念にとらわれているのかもしれない。小説はもちろん、音楽や映画だって、スマホでつくることができる。
残念なことに、スマホには、いまだに、暇つぶしの道具、だらだら使うものといった「スティグマ」(ネガティヴなイメージ)が付きまとっている。子どもにはスマホをできるだけ使わせないとか、大人でもスマホを使っていると遊んだりさぼったりしているように見えるという風潮がある。
今や、スマホという道具は、それを使いこなして仕事もばりばりやり、大いに学び、世界とつながることのできる「入り口」である。スマホの可能性を十分に活かすためには、自分自身がスマホをめぐるスティグマから解放されて、自由にならなくてはならない。
スマホは、性能的には一昔前のスーパーコンピュータと変わらない。以前だったら大型計算機センターにしかなかった巨大な計算パワーが、手の中にあるのだ。
携帯の電波が「5G」(第5世代移動通信システム)になることで、スマホの性能と可能性はますます増大する。スマホでできること、すべきことのイメージを、今から更新しておく必要がありそうだ。