中国経済の減速でかげりを見せるインバウンド消費

先ほど、2015年が「爆買い」のピークだと書きましたが、2016年度以降の全国百貨店売上高はさえません。それは、中国景気の減速に大きく関係しています。

中国経済は、2008年のリーマンショック、その翌年にかけての世界同時不況への対応として4兆元(当時のレートで56兆円)にも上る巨額の景気対策を行った影響で、その後は鉄鋼やセメントなどの過剰設備に悩まされてきました。景気対策当時はそれでも9%程度の成長を確保しましたが、その後は過剰な景気対策の副作用に悩まされることとなったのです。

また、長い間の「一人っ子政策」の影響があり、労働力人口の減少が成長鈍化に悪影響を与えています。

そのため、今年4~6月の成長率は6.2%まで低下しています。

2015年あたりから減速傾向は鮮明となり、それまで元高を警戒していた中国政府は、一転して元安への対抗策を取らざるを得なくなりました。元を防衛するために、それまで約4兆ドルあった外貨準備が3兆ドルにまで減るぐらいの外貨売り・元買いの介入を続けました。外貨準備が短期間に1兆ドルも減少したのです。

それに呼応するように、中国政府は海外での買い物の関税率を上げました。

さらに、今年1月からは、ネットでの商品の転売にも税金がかかるようになりました。日本などで大量に仕入れた商品をネット上で転売する「代理購入(代購)」に規制がかかるようになったのです。個人使用分は従来通りですが、これにより代購は大幅に減少したと言われています。そういえば、東京や大阪で、大きなビニールのキャリーバッグを両手で引っ張っていた人たちを最近見かけなくなったような気がします。実際、一部の化粧品会社やドラッグストアには、大きな影響が出ています。

また、韓国からの訪日客も日韓問題の影響で激減しており、そのこともインバウンド消費に影を落としています。

私は消費増税の9カ月後からが心配だ

ここまで説明したように、前回2014年4月の増税時には、家計の支出は落ち込んだものの、企業業績やインバウンド消費が下支えしました。しかし、今回はその両方ともに期待薄です。

2020年には東京オリンピック・パラリンピックがあり、その分、訪日客やインバウンド消費の増加が見込まれますが、期間が限られる上に、そのインパクトは現状の日本経済の規模を考えるとそれほど大きくないと考えられます。

GDPの計算方法が変わっているので単純な比較はできませんが、1964年の東京オリンピック当時に比べて、現在の日本の経済規模は約18倍に成長しています。ひとつのイベントでの効果は限られているわけです。

10月1日に消費税増税が行われましたが、その直後の景気、とくに消費の動きとともに、ポイント還元などの景気刺激策が終わる9カ月後、東京オリンピック・パラリンピックを間近に控えた2020年6月からの経済の動きを私は今から心配しています。

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