ビタミンD不足は認知症にも関係している
一方、アルツハイマー型認知症は、アミロイドβというタンパク質が脳に蓄積されることで、情報伝達を司る神経細胞間のシナプスに弊害を及ぼします。これによって、著しい記憶障害を引き起こし、認知機能の低下を招くのです。このアルツハイマー型認知症は、現在日本人の認知症患者さんの約60%を占めています。
認知症がこのように急増の一途を辿る背景として、日本人の長寿化に加え、多すぎる炭水化物の摂取や肉食の増加に見る食の欧米化、さらにビタミンDの欠乏に問題があるのは明らかです。
アルツハイマー型認知症とパーキンソン病では、記憶を司る脳の海馬において、脳の老化防止・活性化を導くタンパク質や、脳内神経の回路の形成に関わるタンパク質が欠乏状態に陥っています。
重度のビタミンD欠乏症の人は全員認知症になる
前記したように、ビタミンDの受容体は、この海馬にも多く出現しています。先にうつ症状を改善させる要因の一つとして、ビタミンD補充の必要性を挙げましたが、それが有効に働くのは、前記した2つのタンパク質の合成をビタミンDが促すからです。
同じような効果がアルツハイマー型認知症やパーキンソン病にも期待できるのは、英国エクセター大学の研究チームによって行われた以下の追跡調査からも容易に想像できるはずです。
同研究チームは、認知症がない歩行可能な65歳以上の高齢英国人1658人を対象に、血中ビタミンD濃度を測定し、平均6年にわたって認知症の発症状況などを調べています。
その結果、血中ビタミンD濃度と認知症発症の明らかな関係が認められました。10~20/ml未満の軽度欠乏群は53%、10/ml未満の重度欠乏群に至っては、実に125%もの確率で認知症を発症することがわかったのです。
アルツハイマー病そのものに関しても、軽度のビタミンD欠乏群で69%、重度の欠乏群では122%の発症リスクが認められました。
つまり、重度のビタミンD欠乏症の人は、例外なく認知症を発症するのです。