9割が業務用、個人への販売は1割
【有坪】その中で、渡辺さんが経営している「ヴィレッジトラスト つくだ農園」では、どのような農業を行っているのでしょうか?
【渡辺】僕が大原に住み始めたのは2006年で、本格的につくだ農園を始めたのが2009年ごろになります。あまり大きくない農地をあちこちに持っていて、全部を合わせると約1ヘクタールです。
有機JAS認証は2009年からずっと取っていて、年間40種類の野菜を作っています。その中には九条ネギや金時人参、海老芋、聖護院大根、万願寺とうがらしなどの京野菜や、大原の特産である赤紫蘇もあります。
【有坪】売り上げ構成比も教えてください。先ほど直売所の話もありましたが。
【渡辺】基本的には業務用への卸販売が多いです。売り上げでいえば9割が卸しで、1割が個人への販売です。業務用への卸販売は、京都生協などのスーパーマーケット、八百屋さん、レストランなどです。
直売所に出荷することもありますけど、売り上げ的にはそんなに大きくありません。個人への販売は、基本的にインターネットによる注文を受け付け、宅配便で送る野菜ボックスとして販売しています。
大原に住んだきっかけは「大学院の研究」
【有坪】業務用の卸販売先は、ご自分で探したのですか?
【渡辺】自分で開拓したところもありますし、紹介で取引が始まったところもあります。それから大原では「朝市」が週に1回行われるのですが、農家になってから2016年2月までの10年間、ほぼ休むことなく参加していました。そこでの出会いも販売網の確立につながっています。
【有坪】紹介というのは、どなたからですか?
【渡辺】それを説明するには、僕がこの大原に来たきっかけから話さないといけません。少し長くなりますが……。
【有坪】大丈夫です。なぜ2006年に大原で住み始めたのですか? そもそも渡辺さんは京都の方ですか?
【渡辺】僕は岐阜出身なんです。大原に住んだのは「田舎で暮らしたい!」と強く願ったというわけではなくて、大学院生として同志社大学大学院総合政策科学研究科のソーシャル・イノベーション研究コースに通っていたからです。
当時できたばかりの研究科だったのですが、実際に起きている社会問題を解決するというミッションの下、大原の空き家を大学で借りることになったんです。それで、自然やアウトドアが好きだった僕が指名されました。「それなら行ってみます」ということで、来ました。