自分で考えて実行しないとうまくいかない
【有坪】具体的にどのような勉強をしたのですか?
【渡辺】今でも長澤さんで行っている「作付検討会」をしました。そこではお弟子さんたちが集まって、長澤さんや複数いる弟子同士が、それぞれの作付計画をチェックしていきます。
そこで「レタスはどういう理由で作付けするのか。なぜこの量なのか」といったことを聞いたり、答えたりしていきます。そのうえで、定期的にそれぞれの農家を訪れ、「なぜ計画の2倍もレタスをやっているのか」といった実態を踏まえたやりとりをします。
つまり計画を基にした実際の営農も見ることで、いろんな意見や考え方、それぞれの事情などを聞くことができるので、すごく勉強になりました。
それから、有機農家としての考え方も学びました。といっても、「こういう考え方でやれ!」ということではなく、「自分で考えてやらないとうまくいかない」ということを学びました。
農業を経営するうえでの「軸」が必要
【有坪】どういうことでしょうか?
【渡辺】いま僕自身も研修生を受け入れたり、自分の出身である大学院で開催している有機農業塾で講師をしたりする中でも常に伝えていることですが、「なぜ農業をやりたいのか。その中でもなぜ有機農家なのか」という目的を明確にしないと、続けていくことは難しいということです。
「環境に良いから」「自分のライフスタイルに合っているから」でもいいし、僕のように「安全・安心なものが作りたい」でもいいし、「お金もうけがしたい」でもいいんです。そういった立ち返る場所、農業を経営するうえでの軸を持っておくべきだということです。
【有坪】それはなぜですか?
【渡辺】有坪さんもご自身で農家をされているのでご存じだと思いますが、有機農家は忙しいからです。少ない種類の作物を大規模に栽培すれば、大型の機械などを使って効率よく作業ができたりしますが、多品種を栽培する小規模の有機農家は、細かな作業がたくさんあります。
販売網も複数あるのでそれだけ手間もかかります。加えて病害や獣害に遭うこともあります。繁忙期には、人を雇わないと作業が追いつかないので、人件費もかかります。