大学が借りた農地の管理を任された

【有坪】最初は学生として来たわけですね。

【渡辺】はい。そのときに大学は農地も借りたので、そこの管理も任されました。いきなり「農地の管理をしろ」と言われても何をしたらよいかわからなくて……。

とりあえず何か野菜を育ててみようと思って、まわりの農家さんに聞きながら、自分たちで食べる野菜を作り始めました。案外、素人でも野菜はちゃんと育つもので、それなりに収穫できました。

同志社小学校の食育プログラムで利用したり、地元の子どもたち向けに簡単なワークショップをしたりしても食べきれないほどだったので、隔週で朝市に出させてもらいました。

画像提供=渡辺雄人氏
最初は大学院生として大原の地に来た

「京都における有機農家の第一人者」に弟子入り

【有坪】そのときからすでに有機栽培を意識していたのですか?

【渡辺】そうですね。自分たちで食べたり、子どもたちが畑の中に入って遊びながら収穫体験をしたりしていたので、無農薬で有機栽培にすることで、できる限り安全・安心なものを作りたいなと思っていました。

次第に、本格的な農業をやってみたいと思うようになり、たまたま同じ大学院に一回り以上も年上の有機農家さんがいたので、弟子入りをしたんです。

その方は、京都市右京区の太秦というエリアで有機農家をしている長澤源一さん。「京都における有機農家の第一人者」と呼ばれることもある方です。

約3年にわたって、有機栽培のノウハウを学ぶとともに、さまざまな経験をさせてもらいました。その中で、販売先を見つけるための方法を教えてくださったり、実際に取引先を紹介してくださったりしたこともありました。

【有坪】販売先の見つけ方以外で、その3年間の経験はどのように生きていますか?

【渡辺】実際に有機で野菜を育てる中での考え方や野菜の状態を知る方法、土作りなど、本当にいろいろ学び、それが今もすごく生きています。中でも最も勉強になったのは作付計画です。

1年間で、どの時期にどの野菜をどれだけ作るかという計画で、自分ひとりでやっていたときはまったくそういうものを考えていませんでしたので。