こんな事例は今まで聞いたことがない

翌日、寒空の下、物陰に隠れながら犯人を待つうちに、時間は刻々と過ぎていった。時計は22時59分をさしている。もうすぐ予定時刻だが変わった様子はない。23時が過ぎた。ふぅ、今日は何事もなしか。家に戻ろう。

ところが、ドアを開けた瞬間、点いているはずの玄関の明かりはなく、暗闇の奥で母が懐中電灯を握っていた。

「ヒロシ君、またよ、また停電よ」

ブレーカーは落ちていない。しばらくすると、自然に明かりは戻った。

母親がイヤミがちにつぶやく。

「なんなのかしらね。あんたが泊まりに来るまでこんなことはなかったのに」

嫌なことを言うおばちゃんだ。オレ、何もしてないぜ。

翌日、東京電力の担当者を呼んでチェックしてもらったが、彼は戸惑いながら言う。

「故障などの問題は見当たりません。こういった事例は今まで聞いたことがないです」
「例えば配電盤へのイタズラということは?」
「うーん。でしたらマンション全体の電気が落ちるはずですから。今の段階では原因不明としか言えないですね」

なんだよ。原因不明って。オレが豊島マンションの呪いを引きずってきたってのかよ。

小学生の妹が見た背後にゆらめく「白いの」

まるで冗談みたいな話なのだが、さらに翌日の昼にも不可思議なことが起きた。

オレにはAV女優の妹、高校生の弟以外に、さらに2人の弟妹がいるのだが(つまり5人兄弟)、その小学4年生の妹・美幸(仮名)が突然、叫んだのだ。

「うわ!」

あまりに大きな声で言うもんだからイスから転げ落ちそうになった。どうしたんだよ?

「なんか後ろにいたよ、白いの!」

白いの? え、なに? 反射的に振り返ってみたが、ただ壁があるだけだ。

「動いたんだよ? すぐになくなったけど…」

オレがタバコを吸っている後ろに、白いモヤのようなものがかかり、1秒もたたないうちに消えたという。タバコの煙じゃないのか?

「違うよ。煙じゃないよ」

そう言ったまま、美幸は黙りこくっている。おいおい、霊感とかそういうヤツなのかよ。勘弁だぜ。

「じゃあさ、見えた白いのってどんな感じだったのか、ちょっと絵で描いてくれよ」
「うん」

クレヨンを持ってくると美幸はスラスラと描きだした。

「今もいるのか?」美幸が一瞬こっちを見る。

「いないよ」

なんか怖いな。子供がウソつくとも思えないし。