「小者でニュースバリューがない」存在
当局を牽制する意味も込められているのでしょう。
けれども、こうした発言をしてしまえば、小馬鹿にされたと感じた捜査側の対抗心をあおる結果にもなりかねません。ただ、〈ひろゆき〉という存在を、あくまでもロジックに基づいてとらえれば、「小者」であり、「ニュースバリューがないっていうところに落ち着く」ほかありません。ここで触れた報道については、堀江貴文の逮捕時のような盛り上がりは皆無だったと言えます。
加えて、「『2ちゃんねるは、アメリカのサーバーでアメリカのサービスです』と言い張った途端、日本の法律が何も通用しないという現実がある」(*5)。である以上、〈ひろゆき〉や2ちゃんねるを「まだまだコントロールできる存在だから逮捕していないだけ(*6)」でしょう。
〈ひろゆき〉という日本人が運営しており、捜査協力も行っているからこそ、息の根を止められません。この認識は、少なくとも現在までのところロジックが通っています。
他人のアイデアに乗る「暇つぶし」に生きてきた
また、民事訴訟についても、「処理できない量の訴訟を起こしてしまえば、自動的に賠償金が認められてしまう」。この点についても、「賠償金に関しては支払わなくても刑事罰が発生することはない」という点も、ともに「変なルールだと思う」としながらも、次のように開き直っています。
こうして〈ひろゆき〉の発言を並べてみると、確かに、法律や倫理をあざわらうようにも読めます。しかしながら、〈ひろゆき〉の個性は、「ロジカルに生きる」スタイルへのこだわりにあります。
それは、昭和51年(1976年)に生まれ、数々のIT起業家が生まれた「ナナロク世代」のエンジニアだからのみならず、何かをゼロから作るのではない、他人が考えたアイディアに乗るだけという「暇つぶし」のロジックです。
(*4)ひろゆき「世界の仕組みを解き明かしたい」『本人』vol.09、太田出版、2009年、17p
(*5)ひろゆき『2ちゃんねるはなぜ潰れないのか? 巨大掲示板管理人のインターネット裏入門』扶桑社新書、2007年、11p
(*6)ひろゆき、同上、13p
(*7)ひろゆき、同上、133p