相談窓口がないことで、被害者が深刻な状況に
署名の趣旨は2つあった。ひとつは、文部科学省に対して、「教員から生徒へのハラスメント」の相談・紛争に対応する公的機関の設置を求めるもの。もうひとつは、東京都と世田谷区に対し、上記の機関とは別に、より簡易に、被害生徒が相談できる窓口の設置を求めるものだ。
この日佐藤さんは、署名とともに賛同者から寄せられた意見を東京都教育庁の担当者に手渡した。担当者から公立と私立の両方の担当課などに共有してもらうことを確認し、「よろしくお願いします」とだけ伝えて、都庁を後にした。
佐藤さんは署名と同時に、スクハラの実態について聞くアンケート調査を署名サイト上で実施していた。回答したのはスクハラを経験した約60人。「誰からハラスメントを受けましたか」という複数回答が可能な質問に対して、「担任の先生」と答えた人は52.5%にのぼった。次いで「教科担当の先生」が33.9%、「部活動の顧問」が23.7%という結果になった。
次に「ハラスメントの被害を誰かに相談しましたか」との問いに、84.7%の人が「はい」と答えた。相談相手については「学年主任などの管理職」と答えた人が最も多く、「両親」と「担任の先生」が続いた。
ところが、相談したと答えた人に、相談の効果があったのかを聞くと、回答は「かえって状況が悪化した」と「全くなかった」が最も多く、ともに32%だった。「あまりなかった」と答えた人をあわせると、7割以上のケースで、相談しても解決しなかったことになる。
その一方で、相談できなかった人も15%いた。その理由は「どこに相談していいかわからなかった」「我慢するしかないと諦めていた」が大半を占めた。相談窓口がないことで、被害者が深刻な状況に陥っていることが考えられる。