日本の若者は「信仰心が薄い」は間違い、かなり「宗教に篤い」

昨今、「墓じまい」などの葬送の簡素化が言われている。若者の死生観を見ることで、30年〜50年後の中長期的視座に立った葬送に関する予測もできそうだ。ここで、アンケート結果の一部を紹介しながら、葬送の意義について論じていこうと思う。

撮影=鵜飼秀徳
十三詣りの風景(京都・法輪寺)

たとえば「信仰」について。昨今、「宗教離れ」と言われて久しい。しかし、それは本当だろうか。

最近では、NHK放送文化研究所が国際比較調査グループ(ISSP)の一員として調査し、2019年に発表した「宗教」に関するリポート(対象18歳以上、有効回答1466人)がある。「信仰心があるか」について尋ねたところ、「ある」と答えた人は26%にとどまる一方で、「ない」は52%に上っている。

このデータを見る限り、日本人は「信仰心が薄い」民族のように思える。しかし、人生儀礼や年中行事、文化体験などにおいて、宗教が欠かせない存在になっているのも事実だ。子供が生まれればお宮参りや七五三などの際、寺社仏閣にお参りをする。

新入生に「合格祈願を手や神社でしたか」「合格のお守りを試験に持参したか」と手を上げさせれば、大多数が挙手をする。

結婚式はキリスト教式が多いだろう。葬式は簡素化しているとはいえ、依然として仏式がほとんどだ。さらにその後、回忌法要も数十年間にわたって実施する。こうしてみれば、日本人は「信仰心が薄い」とは言い難く、むしろ、かなり「宗教に篤い」民族と言えそうだ。

大学生の6割超が「私は一族のお墓を守っていく」

それは、「信仰」というニュアンスよりも、「生活上、必要不可欠な存在」に宗教がなっているとも言えそうだ。

事実、「お寺や神社は必要だと思うか」の問いに対し、農大生は

強くそう思う……31%
まあそう思う……56%
どちらでもいい……10%
なくていい……2%
必要ない……1%

と肯定派が大部分(87%)であった。

「墓参り」について、盆入り前にアンケートを採ってみた。すると、意外にもきちんと墓参りしている若者が多いことがわかった。「1年に1回程度」が35%、「半年に1回」が33%であった。「3カ月に1回以上」という、墓参りに熱心な学生は26%いた。一方で、「いかない・行ったことがない」は2%にすぎなかった。

写真=iStock.com/kazunoriokazaki
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「墓参りは必要だと思うか」の質問に対しては、肯定派が81%であった。農大生へのアンケートでは「一族のお墓を守っていくか」いう質問もしてみた。結果はこうだ。

「あなたは一族のお墓を守っていくか」
守っていく……64%
祖父母の墓までは守る……14%
親の代まで守る……15%
早く墓を処分したい……2%
守る墓がない……5%

「守る」と明言する学生が6割超であることがわかった。一方、お墓の維持について、親世代(46〜55歳)はどう考えているのか。冠婚葬祭総合研究所「葬祭等に関する意識調査」(2016年、以下、冠婚葬祭総研調査)によれば、「お墓を守るのは子孫の義務だと思うか」という質問に対し、肯定率は58%であった。つまり、親よりも子供世代のほうが、先祖供養に対する意識は高そうだ。