男の価値観に沿った女性エリートを増やしても意味がない

——これは政治家に限りませんが、男性社会が作り出した天井を突破するのではなく、過剰に適応してしまうという問題がありますね。

そうなんですよね。この本を読んだある方から、こんなことを言われました。

本当に壊さないといけないのは男社会における「天井」ではないのではないか。男社会という鉢があり、その鉢の中で女性が争っている。男の価値観に沿った女性エリートを増やしたところで意味がないのではないか。男性が作った今の鉢を壊し、新しい鉢を作ることが大事ではないかと。

その通りだと思います。でも現実問題として、まずは男社会の現状を変えていくことから始めないと。ぶっ壊す、というのは、日本社会にはそぐわないし、反動も大きいですから。変え続けることは壊すこと、それによって、自然と新しい鉢が出来上がれば理想です。そうじゃないと、まっとうに働きたい、活躍したいと思う女性が社会に入ってこられないですよね。入っても、すぐに出て行きたくなってしまう。

撮影=プレジデントオンライン編集部
ノンフィクション作家の石井妙子さん

「破水するまで働いた」が美談になってしまう

——例えば「職場で破水するほど一心不乱に働き、その後も活躍して管理職になった」ということが、キャリア・ウーマンの美談として語られる現実もあります。それが美談になってしまうこと自体が「男社会」のダメな点を象徴しているように思ってしまいます。

そうですよね。「大変な経験をした自分」を誇らしく語りたくなる気持ちはわからなくもないのですが、万が一のことがあったら美談でもなんでもない。先輩女性からそういった自慢話をされると、「私はそこまでして働きたいとは思わない。それなら働きたくない」、と思ってしまう若い女性も多いのではないですか。

いまは、あらゆる組織、企業で「女性」であることが売りになってしまうんですよね。女性活躍だから、という理由で重要ポストに抜擢される人、実力以外の要素で優遇されてしまいポジションをつかむ人もいます。

でも、それは女性を正当に評価しているのではなく、上から言われて数合わせをやっているだけです。考えなしに、そういうことをすると弊害が必ず出てくる。

本書ではそういった問題にも触れています。すでに彼女たちの歴史にヒントがある。真の女性活躍とは、どういうものか。戦後初期の男女平等の流れ、教育や改革は非常に先進的だったと思います。その流れを知っている世代である赤松さんが、男女雇用機会均等法の制定に後半生を捧げたことは示唆的です。