なお、これらは協会が毎年度公表している「正味財産増減計算書」の中にある支出項目のうち、「旅費交通費」「会議費」から抽出した金額である。他の項目でも支出が発生していたかどうかは明らかになっていない。

スポーツ保険に入るも治療費は支払われず

協会の不透明な運営体制は、会計報告だけにとどまらない。協会は2005年ごろ、独自の傷害保険を作るため、「トータルネットワーク共済会」という名の共済事業を発足させたと会員に通知している。毎月500円の保険料を支払えば、会員が稽古や試合中にけがをした際、治療費を補償するスポーツ安全保険の役割を果たすものだ。加入パンフレットによると、入院すると1日につき3000円、死亡時には300万円が受け取れるという。

空手協会から届いた共済会への加入を促す会員あての通知文。パンフレットと共に全国の支部に配布された

共済会の代表には、当時協会の会長職にあった中原氏、幹部に植木政明氏(現首席師範)を据え、全国の本部・支部を通して入会を促した。加入を促す会員あての通知文には「公式試合に参加を希望する会員の皆様には万が一の事を考え、共済への入会を大会参加条件とさせて頂く予定」と書かれている。

ところが2007年、保険に入っている会員の1人が練習中にけがをし、診断書を添えて治療費を請求したところ、共済会から返答が得られなかった。話を聞いた別の会員が不審に思い、パンフレットに記載されている電話番号にかけると、「ティー・エヌ・カンパニー」という別の会社につながったという。

登記簿によると、この会社は2005年に設立したが、13年6月時点で閉鎖していた。事業目的は「清涼飲料水の製造及び販売」などと書かれ、共済の事業目的とは異なっていた。共済金5500円を支払ったのに治療費が受け取れなかった複数の会員は、2013年、詐欺などの容疑で警視庁富坂署に告訴状を提出。しかし、同署は「公訴時効(7年)に達しており、立件できない」として捜査を見送っている。

「遺憾に思っている」、保険料の徴収は否定

プレジデントオンライン編集部は空手協会に対し、これらの問題点について問い合わせた。小倉靖典専務理事は、弁護士費用に1億円を支出した事実は認め、「遺憾に思っている」と述べた。しかし、「弁護士費用として1億円は適正な金額なのか」との質問に対しては、「コメントできない」とした。

また小倉専務理事は、「3年ごとにある内閣府の立ち入り検査が2017年にあり、協会の財政運営について是正を求められた。取り崩した退職積立金を今年度中に全額返済する。減価償却費についても今年度から返済を始め、21年度までに4500万円を復元する」と答えた。

退職積立金をめぐり、代議員に訴えられていることについては「訴えられていることは事実だが、係争中のため、コメントは控えたい」と述べた。