トータルネットワーク共済会については「名前自体は知っているが、協会として共済会を立ち上げた事実はない」と否定。さらに「中原前会長が個人的に立ち上げたやもしれないが、それを協会のスポーツ保険として会員に周知した事実はない」と説明した。
保険加入料を支払った会員が治療費を受け取れなかった事実や、保険加入を大会参加の条件とする旨が書かれた通知文を協会名義で出したことについては「記憶がない」と繰り返すのみだった。
「公正妥当な会計処理とは認められない」
税理士の清水氏は、「最も問題なのは1億円を超える多額の弁護士費用だ」と指摘する。
内訳をみると、1回の社員総会を開くために「相談料」として600万円が計上されているほか、「訴訟対応費」として一度の支払いに2600万円を超えるものもあった。清水氏は書面で「公正妥当な会計処理とは認められない」として、支出管理について協会内でどのような議論があったのか説明を求めている。
公益社団法人とは、公益を生む目的のために厳しい審査を経て、内閣府や都道府県から認可を受けた法人団体だ。内閣府公益認定等委員会事務局が出しているパンフレット「民間が支える社会を目指して『民による公益』を担う公益法人」によると、公益法人のあるべき姿勢として「特定の者に特別の利益を与える行為を行わない」とある。
公益法人がその事業を行うにあたり、社員や理事などの法人関係者に「特別な利益」を与えることは法の趣旨に反する。だが、今回、プレジデントオンライン編集部が入手した資料を見る限り、30年間にわたり会長を務めてきた中原氏やその関係者が、空手協会を私物化している疑いがある。
中原氏は2015年に会長を退いているが、不当解雇された尾方氏が職場復帰できていないことから、現在の執行部にも影響力を持ち続けているとみられる。
「現執行部が中原前会長の体制を引き継ぎ、何ら運営改善が図られていないことが最大の問題」(協会関係者)と危機感を抱く一部の会員や職員は、適正で透明性のある運営体制を協会に指導するよう内閣府に相次いで要望している。
空手は東京五輪の新種目として注目を集めている競技だ。その中心となるべき空手協会が、このままでいいのだろうか。