このことを踏まえて、私は日本語であれば、20字が最適な長さであると提唱しています。たとえばコマーシャルのキャッチコピーが、その良い例でしょう。おなじみのフレーズといったら、こんなコピーが思い浮かびます。
「インテル、入ってる」(8字/インテル)
「セブン-イレブンいい気分」(11字/セブンーイレブン)
「すべてはお客さまの『うまい!』のために。」(16字/アサヒビール)
「お金で買えない価値がある。」(12字/マスターカード)
「自然と健康を科学する」(10字/ツムラ)
“詳細に、正しく”では頭に焼きつかない
こんな誰でも聞いたことがあるテレビコマーシャルのキャッチコピーは、そのほとんどが20字以下で語られています。短いからこそパワフルで、さらに言葉のリズム感も良くなり、記憶に焼きつきやすいのです。かっぱえびせんのキャッチコピーと次の説明例を比べてみてください。
「このえびせんは、小麦粉、塩などを混ぜた生地に、天然のエビを数種類混ぜ、頭から尻尾まで殻もいれて作っているために、独特の風味が楽しめます。また揚げずに、炒ることによって生地が膨らみ、サクサクとした歯触りがして、そこが魅力になっています」
きっと、食品の開発者であれば、このように詳細まで説明したかったことでしょう。しかし、このように詳細に正しく説明されると、
「どの種類のエビなんだろう?」
「殻も入っているんだ! のどにひっかからないのかな」
「炒ると膨らむんだ。どうしてだろう」
どんどん想像が膨らんでしまいますよね。
ですから、正しい説明だとしても、多くを伝えようとすればするほど、短いコマーシャルの時間では頭に焼きつかないし、覚えられすらしないのです。こんな繊細なつくり方をしているからこそ、とにかく、食べる手が止まらなくなるほど美味しい。そんな思いが、「やめられない、とまらない! かっぱえびせん」の18字に凝縮されています。
解釈の余地がないほどに言葉を絞る
特に日本語では、この「20字に削ぎ落とす」ことは大事です。
日本人は礼儀を重んじて婉曲的な表現を好むこと、そして敬語なども使われることから、日本語は実際に伝えるメッセージそのもの「以外」の余計な描写などが多くなりがちな言語です。
そして婉曲的表現で、相手に察してもらう文化だと、相手に解釈の余地を与えることになり、それが誤解だったり、伝わらなかったりすることの大きな原因となります。よく知った間柄なら「あうんの呼吸」で伝わるでしょうが、相手が初対面だったり、共通の価値観を持っているかわからなかったりすると、相手の解釈の振れ幅が大きくなってしまいます。