「子どもの声を受け止めるための取り組みが必要だ」

佐藤さんは7月16日、相談窓口の設置を求める署名活動について、文部科学省記者会で記者会見を行う。翌日から1カ月間かけて署名キャンペーンの発信サイト「Change.org」で呼びかけ(※)、文部科学省と東京都、世田谷区に署名と要望書を提出する予定だ。

※Change.org「先生から生徒へのパワハラをなくすため、生徒が相談しやすい公的窓口を設置してください!」(https://www.change.org/SchoolHarassment

この署名キャンペーンでは、小学生、中学生、高校生がスクールハラスメントに遭った場合、文部科学省に対して教育委員会から独立した「先生から生徒へのパワハラ」の相談・紛争処理機関を設立するように求めている。また東京都と世田谷区には、気軽に相談できる場所として、学校で起きている「隠されたハラスメント」の相談窓口の設置を求めている。

学校でのハラスメントに詳しい名古屋大学大学院の内田良准教授はこう話す。

「子ども間のいじめについては、各自治体でさまざまな相談体制が整備されてきた。一方で、教師から子どもに対する暴言や体罰などのハラスメントについては、相談体制がほとんど構築されていない。時に教師が生徒の権利を侵害することはありうる。そうした前提から、大学では相談窓口の設置が一般的になった。小中高でもこの考え方を広げるべきだ。理不尽な指導から子どもを守るために、子どもの声を受け止めるための取り組みが必要だ」

「苦しんでいる人の力になりたい」

佐藤さんは、スクールハラスメントの被害に遭い、苦しんでいる人に、こう呼びかける。

「周囲の無理解に苦しみ、自分を信じられなくなるかもしれません。心が折れそうになるかもしれません。でも、どうか決して自分を疑わないで、そして諦めないでください。自分を強く持って諦めずにいれば、道が開ける瞬間は必ずやってきます」

相談窓口や紛争処理機関ができたからといって、佐藤さんの苦しみがすぐに解決するわけではない。しかし、学校側からのハラスメントについて相談窓口さえないという現状では、学校で何が起きているのかは外からは分からない。被害者は不登校や退学に追い込まれても、泣き寝入りするしかないのだ、

佐藤さんは「苦しんでいる人の力になりたい」と話す。

「相談できる場所があれば、孤立せずに救われる人もいるはずです。自分と同じようなつらい経験をする人を、これ以上増やしたくない。署名活動は遠回りな方法かもしれませんが、苦しんでいる人のために少しでも貢献できればと思っています」

(撮影=プレジデントオンライン編集部)
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