担任からのパワハラと2度の転校勧奨
「私立学校の場合、現状では先生からパワハラを受けたときに相談できる窓口がありません。東京都や世田谷区の教育委員会からは、『自分たちには私学を指導する権限はない』と言われました。このままでは、被害者は泣き寝入りするしかないのです」
こう話すのは、東京都世田谷区の私立中高一貫校「世田谷学園」で、中学生の時に担任教員からパワハラを受けた佐藤悠司さん(19)だ。担任からのパワハラが原因で、中学2年生の終わりから高校卒業まで不登校を余儀なくされ、2度の転校勧奨も受けた。現在は早稲田大学に通っているが、パワハラが原因で発症した睡眠障害の治療を続けている。
プレジデントオンラインではこれまで2度にわたり、世田谷学園による佐藤さんへのパワハラ疑惑を報じている(「名門私立“世田谷学園”の教員パワハラ疑惑」「“離婚家庭の子はダメ”パワハラ発言の顛末」)。学園側は事実関係を認めて謝罪していたが、佐藤さんらが原因究明と関係者の処分を求めると態度を変え、去年11月以降はパワハラについても全面否定している。
両者の主張が食い違っている状況だが、この問題について被害者である佐藤さんが相談できる公的な窓口はない。このため現状では、学校側が話し合いに応じないのであれば、裁判に訴えるしかない。佐藤さんはこうした状況を変えたいと、実名を明らかにして署名活動を展開することを決めた。プレジデントオンラインでも、これまでの記事と異なり、今回は佐藤さんの実名を表記している。
文科省の通知に反した世田谷学園の対応
佐藤さんが不登校になったきっかけは、部活動をめぐり担任から大声で怒鳴られ、「お前は離婚家庭の子どもだから心が弱い」などとののしられたことだ。その後も担任からの暴言が続き、佐藤さんは慢性的な腹痛を発症。「担任に会いたくない」という思いから不登校になった。
さらに問題なのは、世田谷学園が不登校となった佐藤さんに、2度にわたって転校勧奨した点だ。この対応は文部科学省の通知に反している疑いがある。
文部科学省は児童・生徒の不登校の増加を問題視し、学校による支援の在り方について、2003年、2009年、2016年と3度、通知を出している。特に2009年の通知では、不登校になった高校生が学校以外の公的機関や民間施設で相談や指導を受けた場合、それを出席日数と認めることなど、生徒の進路形成への支援を求めている。