「民間並み」の実態は「民間大企業並み」

国家公務員のボーナスが7年連続で増え続けている背景には、公務員給与・ボーナスを「民間並みに引き上げる」という政府の方針がある。毎年8月に公務員の給与見直しについて勧告する人事院勧告でも、あくまで前提は「民間並み」ということになっている。

「いや、うちの会社では社員に平均67万円なんて払われていない」「そもそもボーナスなんて雀の涙」といった中小企業で働く人の声も多いに違いない。実は、人事院の言う「民間並み」というのは「民間大企業並み」というのが実態なのだ。

人事院の調査は、事業所従業員数50人以上の企業を対象にすることになっているが、実際に調査する1万社のうち約4000社は500人以上の大企業、さらに4000社は100~500人の企業になっている。50~100人の企業は2000社程度になっているのだ。つまり、圧倒的に大企業のウエートが高く、その分、比較対象とされる民間給与・ボーナスの水準が高くなる仕掛けだ。

「民間は公務員より高い」と主張し続けるのか

厚生労働省が9日発表した5月の毎月勤労統計(速報)によると、基本給や残業代などを合わせた1人当たりの現金給与総額(名目賃金)は27万5597円と前年同月比0.2%減った。物価の影響を加味した実質賃金も1.0%減で、名目、実質ともに5カ月連続でマイナスになった。

毎月勤労統計は調査方法の不備や、対象の入れ替えなどで政権への「忖度(そんたく)」があったのではないかといった問題が指摘され、統計としての信頼が大きく揺らいでいる。それでも5カ月連続のマイナスというのは無視できない「傾向」だろう。

民間ボーナスの7年ぶりの減少や、毎月の給与の減少を、8月の人事院勧告がどう捉え、どんな公務員給与の見直し勧告を出すのか。よもや、それでも公務員の給与は安いといって引き上げ勧告を出すことはないだろうが、またしても詭弁を弄して、民間は公務員より高いので、それに合わせると言い続けるのだろうか。