ペイペイを猛追するメルペイ
私も数えてみたところ、この期間に50回以上、ペイペイで細かな支払いがありました。支払いの際にはスマホで払う。残高が足りなくなったらスマホをタップして銀行口座からチャージする。まさにそのような利用習慣が、私の場合、3カ月かけてゆっくりと身に付いていったわけです。
日本のスマホ決済市場はここからさらに活性化していきます。競合サービスが手をこまねいているわけもなく、ペイペイに対抗するキャンペーンが相次いで実施されたのです。
スマホ決済は小売店や飲食店にもユーザーにも導入が簡単な分、サービスの乗り換えも容易です。特に、まだペイペイが一人勝ちの状態になっていない現在は、力ずくでその状況をひっくり返す戦略が有効になります。
まさにこの点を突いて対抗キャンペーンを発表したのが、メルカリが運営するメルペイでした。メルカリの売上金をチャージしておけるメルペイを使った、大規模な還元プログラムをゴールデンウイークにぶつけてきたのです。
後発のサービスが実施するキャンペーンには、何らかのインパクトが必要です。ここでメルペイが行ったのは、「セブン-イレブンなら還元率70%」というキャンペーンでした。還元額の上限は2500円。コンビニの利用で5000円まで半額というのは確かにおトクです。ただし、セブン-イレブンはQRコード決済に対応せず、非接触型のiDでしか払えなかったため、獲得できた利用者は限定的だったと思われます。
そのためメルペイは6月に再度、範囲を拡大して同様のキャンペーンを行います。QRコード払いができるローソンなどのお店では50%、そしてiD払いができるセブン-イレブンとファミリーマートでは70%ポイント還元という内容です。このような対抗策はこれからも継続的に発動されると思われます。
3000万人のLINEユーザーに“ペイ”を使わせる方法
キャンペーン総額がより大きかったのは、5月20日に始まったLINEペイの「300億円祭」でした。このキャンペーンの特徴は、LINEの友だちに何人でも1000円を送ることができること。しかし受け取れるのは1人1回、1000円までという制限があります。つまり300億円の予算で3000万人のLINEユーザーにLINEペイを使い始めてもらおうという企画だったわけです。
5月20日に始まったこのキャンペーンは、初日で90億円、3日目には150億円に到達しましたが、10日間のキャンペーンを終える時点では200億円までしか届かず。LINEは300億円を配りきるまでキャンペーンを続行し、6月10日に300億円を達成したことを発表しました。獲得ユーザー数は200億円なら2000万人、300億円に到達すれば3000万人ということになります。
このキャンペーンに関しては、「ユーザーが贈られた1000円を使わなければ意味がない」と言われましたが、LINEペイはそのあたりの対策も万全でした。
登録を済ませて1000円を受け取ると、その直後にLINEペイから別の2枚のクーポンが送られてきます。1枚はローソンで使える100円クーポンで、もう1枚はファミリーマートで使える100円クーポン。私にとってはどちらも近所のよく行くコンビニです。そこで150円のペットボトル飲料を買おうと入ったコンビニで、「せっかくだからあのクーポンを使ってみよう」ということになりました。
クーポンを開いて指示通りにタップしていくと、LINEペイの画面になります。そこにはクーポン以外に例の1000円がチャージされていて、スマホのバーコードを見せるだけで、現金を一切使わずに買い物することができました。
ここで重要なのは、一連の動作により、私がLINEペイの使い方を学習したということです。後発の決済サービスも、こうして着々と新しいユーザーを獲得し、1人でも多くのユーザーがスマホ決済を体験するように仕向けているわけです。