国の中枢を担う人が数字に弱いのは本当にまずい
変化の激しいビジネスの現場では、既存の方法が通用しない場面が増えている。そんな今だからこそ、数学的なセンスがますます求められる。
「少し数学がわかる人なら、従来の『テンプレート』に頼らず、新しい解決策を自分で編み出せるはずです」
数学の素養の有無は、どのような点に表れるのだろうか。西成氏は、プレゼンを10分も聞けばわかるという。
「いちばん大きいのは、エビデンス(合理的根拠)を基に話せるかどうか。数学を知らない人は勘だけでモノを言いがちです。また、パワーポイントの資料を見やすいレイアウトでつくれるのは、『相似』の概念がわかっている証拠です」
政府関係者にアドバイスを求められることもある西成氏が最近驚いたことがある。某省がようやく、エビデンスに基づく政策立案をしようと言い出したのだ。
「今まで何をやっていたのかと愕然としますよ。国の中枢を担う人が数字に弱いのは本当にまずい。データサイエンティストが圧倒的に足りない現状では、AIを活用した『ソサエティ5.0』なんて実現できません。
意識して思考体力を鍛えないと脳は劣化する一方。ビジネス上の課題解決なら中学数学でも十分です。AIに使われたくなかったら、今すぐ再チャレンジしてほしいですね」
東京大学先端科学技術研究センター教授
専門は数理物理学、渋滞学。東京大学工学部卒業、同大大学院工学研究科航空宇宙工学専攻博士課程修了。