「国が何とかしてくれる」という甘い考え

今回、金融庁は監督指針を再度見直し、地方銀行の経営監視を強化、店舗網や人員の見直し、他行との提携や統合といった経営戦略にまで口を出すことになるとみられる。「箸の上げ下ろし」が復活しそうな気配だ。

地方銀行の経営者からは反発の声が聞こえそうだが、どうやらそうではない。むしろお上主導で経営方針を示してもらえるなら、ありがたい、というムードなのだ。「そもそも低金利政策のおかげで低収益になっている」と、実質赤字は自らの経営手腕の結果ではなく、政府の責任だと言わんばかりの発言をする経営者が少なくない。

金融庁はここ数年、フィンテック推進に旗を振り、IT企業など異業種から金融分野への参入が相次いだ。日本の金融業界がガラパゴス化するのを防ぐという明確な目的があったが、一方でこうした新技術での決済などが広がることで、地方銀行はさらに存在意義を問われている。そんな厳しい状況の中で、「国が何とかしてくれる」という甘い考えが地方銀行経営者に広がるのではないか。

地方での「安定的な就職先」ではなくなる

もはや大半の地方銀行に存在意義はなくなっている、というのが実態だろう。単純な貸金業務で銀行が食べていける時代ではなくなった。独壇場だった決済業務もフィンテックで他業種に移っている。このまま行けば座して死を待つことになるのは明らかだ。

では、地方銀行で働く金融ビジネスパーソンは今後どう生きていけば良いのか。地方銀行とともに沈んでいく必要は、もちろんない。フィンテックの広がりで、金融技術を使ったさまざまなサービスが生まれている。広義の金融業界は縮小することはないだろう。いくらでも転職するチャンスはあるということだ。

問題は、「金融のプロ」としての地力を身につけているかどうかである。資産運用しかり、プロとして認知されれば、仕事はどこにでもある。

県庁か地方銀行か農協? 地方で比較的高い給料をもらえる安定的な就職先として地方銀行を選んだ人からすれば、これからは厳しい時代かもしれない。自ら専門知識を身につけ、プロとして生きていく覚悟が必要になる。