公的資金を申請した「きらやか銀行」の台所事情
地方銀行の公的資金注入の第二幕が開けようとしている。背景には将来が見通せない地方銀行に共通する苦しい台所事情がある。自治体、電力会社と並ぶ「御三家」と呼ばれ、地方の就職人気ランキングで常に上位を占めてきた地方銀行の時代は過去のものとなりつつあるようだ。
じもとホールディングス(仙台市)傘下で山形県を主地盤とする「きらやか銀行」が5月13日、公的資金の申請検討開始を表明した。同日、本店で記者会見した川越浩司頭取は申請の理由について、「コロナの影響を受けている取引先の事業再構築に伴う設備投資などを考えるなら、必要な資金だと考えている。地元の中小企業をしっかり支え、守ること、それがわれわれの使命だ」と強調した。
公的資金を受けることで自己資本を充実し、コロナ禍で苦しむ地元企業への資金供給に万全を期すというわけだ。200億円規模の公的資金を申請すると見られている。
しかし、金融界の見方は少し異なる。「きらやか銀行は、過去に注入された公的資金の返済期限が2年後に迫っている。今回の申請はその借り換えのようなものだろう」(メガバンク幹部)という見方だ。
米利上げで37億円もの損失を計上
きらやか銀行の今年3月末時点の自己資本比率は8.42%で、公的資金を返済しても6%台の自己資本比率を確保できるとみられている。国内銀行に求められる最低比率は4%以上であることから、十分に余裕があるのだが。
「コロナ禍で地元企業が予想以上に疲弊しているのではないか。とくに山形県はこれまでインバウンド需要で潤っただけに、その反動が大きい。宿泊、飲食関連企業などが落ち込んでいると聞きます」(大手信用情報機関)というのだ。
そこに追い打ちをかけたのが、連邦準備制度理事会(FRB)の強烈な利上げとロシアによるウクライナ侵攻だった。世界中でインフレに歯止めがかからず、米利上げに伴い世界のマネーが米国に回帰し始めている。
中でも「これまで米債投資に積極的だったきらやか銀行は、米国の利上げで大きな含み損を抱えた」(某地銀幹部)というのだ。きらやか銀行は地元経済の悪化もあり21年3月期に最終赤字に転落していたが、さらに21年4~9月期に外債など有価証券投資で37億円もの評価損を計上している。