投資の基本は長期投資と分散投資といわれる。これはすべての状況で当てはまる法則なのだろうか。経済ジャーナリストの荻原博子さんは「長期投資・分散投資をしておけば安心は大間違いだ。30年後の経済なんて誰も予測できない。金融機関が長期投資を勧めるのは手数料を稼げるからだ」という――。

※本稿は、荻原博子『知らないとヤバい老後のお金戦略50』(祥伝社)の一部を再編集したものです。

芽が出ている並んだコイン
写真=iStock.com/arthon meekodong
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30年後の経済なんて誰も予測できない

投資の基本は、「長期投資」ということで、国を挙げて「iDeCo」や「NISA」を勧めています。

しかも、金融庁のホームページを見ると、金融商品を長期で投資していけば、将来お金に困ることはないというような書きっぷりです。

でも、本当に「長期投資」なら安心なのでしょうか。

みなさんは、自分の将来を考える時に、1年後の自分と30年後の自分と、どちらが予想しやすいでしょう。

たぶん、1年後の自分についてはおおよそ見当がつくでしょうが、30年後の自分となれば、どうなっているのかわからないという人がほとんどでしょう。

荻原博子『知らないとヤバい老後のお金戦略50』(祥伝社新書)
荻原博子『知らないとヤバい老後のお金戦略50』(祥伝社新書)

今から30年前に、破綻しないといわれていた銀行や保険会社が破綻し、その後アメリカで同時多発テロが起き、ユーロという巨大経済圏が出現し、リーマン・ショックが起き、東日本大震災で多くの人が亡くなられ、世界中に新型コロナが蔓延し、ロシアがウクライナに侵攻するなどということを予想できた人は、たぶん1人もいなかったでしょう。

投資は、今ではなく将来を予想してやるものですが、1年後の状況はなんとなく予想できても、30年後の経済がどうなっているのかなどを予想できる人は、たぶん1人もいないのではないかと思います。

そもそも、30年前は「給料は右肩上がりに上がるもの」というのが世の中の常識でした。その給料が、「右肩下がりに下がっていく」などということは誰も予想することはできませんでした。

投資の世界も同じ。30年前に6%ほどあった銀行の定期預金の金利が、30年後にゼロ金利になり、4万円近かった株価が2万円台にまで落ちるなどと予想できた人は、1人もいませんでした。

金融機関が「長期投資」を勧めるのは手数料を稼げるから

今、金融機関に行くと、判で押したように、「長期投資」を勧められます。

けれど、「投資のプロ」と言われる人でも、「30年後にはこうなる」などということがわかる人はまずいません。

それだけでなく、みなさんが「長期投資の金融商品」と言われて買う投資信託を、長期投資という視点から運用しているファンドマネジャーなど、一人もいないと言っても過言ではないでしょう。

なぜなら、ほとんどのファンドマネジャーは、3カ月ごとに運用成績が評価されます。まれに6カ月のケースもありますが、その運用成績の評価が悪ければ、外資系の会社などはすぐにクビにされます。

3カ月後に良い実績を残すために必死で金融商品を運用している人たちが、長期投資を考えているかといえば、疑問です。

じつは、「投資」では、3カ月くらいの短期で利益を追っていくことのほうが正しいのです。なぜなら、めまぐるしく変わる経済状況の中では、20年先、30年先のことなど誰も予測できないからです。

では、売る側は短期で投資をしているのに、なぜみなさんには長期投資を勧めるのでしょうか。

客として見た時に、短期で付き合う客ではなく長期で付き合う客のほうが、手数料が稼げるということではないでしょうか。

また、客のほうも、「どうなるかわかりませんが、短期で見るといい投資です」と言われるよりも、「これは将来に備えた長期投資です」という言葉のほうが安心感と魅力を感じるからではないでしょうか。

ただ、世界は激動しています。短期で状況がコロコロと変わります。

こうした状況では、みなさんにも「短期投資」の心構えが必要ではないでしょうか。