こうした過度に有価証券投資に依存した収益確保は、市場が予想に反して動いた場合、致命傷となりかねない損失を被るリスクがある。このため金融庁では有価証券の含み損の早期処理を促す一方、含み損を処理しても適切な自己資本比率が維持できる水準に投資をとどめることや、期間収益で対応できる範囲内に有価証券投資を抑えるよう指導した。

だが、本業の預貸でもうけられない地銀にとって、有価証券投資は望みの綱。そう簡単に抑えられるものではない。

「数が多すぎる」が、再編もうまくいかない

そうした苦しい台所事情を抱えた地銀にショックを与えたのが菅義偉政権の誕生だった。菅首相は就任早々の20年秋に、「将来的に(地方銀行は)数が多すぎるのではないか」、「再編も一つの選択肢になる」と語った。ここからにわかに地銀の再編がクローズアップしていく。

市場では次の再編地銀を予想して、先回りして株式を仕込む動きもみられたほどだった。しかし、地銀の経営は地盤とする地域経済に依拠する部分が大きく、そのありようはさまざま。経営が比較的良好なところもあれば、お先真っ暗のところもある。

支店銀行の窓口カウンター
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金融庁は、そうした個々の地銀の実情に合わせた持続性のある経営戦略を求めているが、悩みの種となっているのが公的資金を受けたにもかかわらず、思うように収益が上げられず、いまだに返済できていない地銀の面々だ。

これら地銀が受けているのは金融機能強化法に基づく公的資金で、当時、13行を数えた。返済期限の近い地銀からピックアップすると、北洋、福邦、南日本にはじまり、みちのく、三十三、東和、高知、北都、宮崎太陽、豊和、仙台、筑波、東北、そしてきらやかと続いた。大半は人口減少と地元経済の縮小にあえぐ地銀である。

しかし、日銀のマイナス金利に象徴される超低金利環境はこれからも続く可能性が高く、伝統的な預貸業務で収益を上げることは難しい。さりとて外債など高利回りの有価証券投資で無理をして、サドンデスとなっては元も子もない。有効な処方箋は優良な地銀との経営統合となるが、統合相手はなかなか首を縦には振らない。結果、公的資金は残ったままとなる。