地方の繁栄と雇用創出は州の権限

連邦政府の役割は国籍や外交、国防、金融政策に関することを決定すること。企業誘致をはじめとした産業政策、すなわち地方の繁栄と雇用創出は州の権限で独自に行われている。それぞれの州がドイツという国家の枠を超えてヨーロッパ、さらには世界を相手に直接ビジネスをして、州ごとに独自の産業や企業を発達させて競争力を磨いてきた。この16基のエンジンがドイツの強みだ。

共産党一党独裁の中国では人事権を中央が完全に押さえてはいるが、経済政策について各省長や市長に権限が与えられている。経済成長の目標さえ達成していれば、ほとんどの開発原案を北京政府はのむ。結果、いつの間にか中国の100万人都市は140以上にも増えた。それらの都市は土地をベースにした開発マジックによって世界中からヒト、モノ、カネを集め、今日の繁栄を築き上げたのだ。

すでに少子高齢化で人口オーナス期に入った日本では、中央政府が集めた税金を再配分して地方を活性化する余力はない。地方が自ら富を生み出さなければ、「創生」はなしえない。

では富を生み出す源泉は何か。一言で言えば、世界中から富を呼び込む施策をみずから決められる自由である。自分たちで産業振興のアイデアを構想し、予算を付けて施策を実行に移し、「我が町に来てくれたら、こんなことができますよ」とアピールして、世界中からヒト、モノ、カネを集めるしかないのだ。

ところが日本の地方にはそのような権限がまったく与えられていない。自立的に発展していくプランもなければ、富を生み出す能力もない。能力を発揮するための法的根拠すらない。憲法第8章を書き換えない限り、日本の地方に自治は根付かず、衰退する運命から逃れられない。

(構成=小川 剛 写真=時事通信フォト)
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