「日本人なら身体的にも精神的にも純潔」と自画自賛

ネット右翼の世界観の根底にある「凛として美しく」路線は、和装や伝統文化の保持など、身体性の純潔と潔癖、ならびに精神的清廉潔白を重視する世界観に、徹頭徹尾貫かれている。

自分たちは平然と中国人や韓国人を差別するという不道徳な行いをしているのに、それを忘却して日本人ならば身体的にも精神的にも純潔であり、道徳的であると自画自賛しているのだから救いようがない。

それほどネット右翼とは、繰り返すように「親からもらった体に傷をつけるとは何事か」という儒教的世界観にとらわれている。だからこそタトゥー文化に極めて激しい嫌悪感を覚え、それに連なるヤンキーや「ヤンキー的なるもの」をDQN(どきゅん)と言い換えて嘲笑の対象とし、当該の日本人は「伝統的な日本文化にはそぐわない異物=日本人ではない」として排斥する。

余談だが、ネット右翼は「激しい身体性」の具現化であるクラブカルチャーにも、抵抗感を持つものが多い。改正風営法をめぐり、おおむね2010年~2015年にかけて、大阪を出発点として全国でクラブの摘発が行われた。これらの恣意的な摘発に疑問を投げかける声が、多くの文化人などから上がったが、ネット右翼も、いわゆる「保守系言論人」も、この問題にはまったく無関心で、中国人と韓国人への呪詛にしか興味がなかったことがその証左である。

「理想的な日本人像」の真逆にある小売店

上記のように「客層にヤンキーが多い」と思われているドンキは、当然、ネット右翼の描く理想的な日本人像とは真反対に位置する小売店ということになる。これを以てしてネット右翼にはドンキが日本の破壊者、すなわち反日企業、在日企業と映るのだろう。

だが、実際にはドンキの主要顧客にはヤンキーが多い、という客観的データは示されておらず、筆者も日常的に郊外のドンキを利用しているが、特段客層にヤンキーが多いという皮膚感覚はない。これらはすべてネット右翼の思い込みが亢進した異常極まりない世界観に他ならないのである。

ネット右翼の私企業への攻撃は、看過しがたい事実であると同時に、その攻撃の理屈が、まったく根拠がないことが最大の害悪である。本連載では、ネット右翼による私企業への攻撃が、いかに馬鹿馬鹿しく理不尽なものであるかを逐一検証していく。次回以降も是非、お付き合いいただきたい。
 

古谷経衡(ふるや・つねひら)
文筆家
1982年生まれ。保守派論客として各紙誌に寄稿する他、テレビ・ラジオなどでもコメンテーターを務める。2012年に竹島上陸。自身初の小説『愛国奴』(駒草出版)が話題。他の著書に『女政治家の通信簿』(小学館)、『日本を蝕む「極論」の正体』(新潮社)、『「道徳自警団」がニッポンを滅ぼす』(イースト・プレス)他多数。近著に『日本型リア充の研究』(自由国民社)。
(写真=iStock.com)
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