「身体性の清廉」を重視するネット右翼

ネット右翼は、筆者の独自調査によれば全国で約200万人。その中枢をなすのは、40歳から50歳のミドル・エイジで、比較的社会的立場の高いものや自営業、会社役員など金銭的に余裕のあるものが目立つ結果となった(2012‐13年調査、筆者著『ネット右翼の逆襲』総和社、2013年)。ここにこそ、ネット右翼のドンキへの嫌悪感が隠されている。

自らは衰え行く肉体。しかしドンキは、その老いに対抗する存在として商品を準備し、そこに身体的には活発と思われる「ヤンキー系」などの客が群がる。その図式その物が、老いに差し掛かりつつあるネット右翼にとっては、羨望の対象としての目障りな異物でしかないのだ。

ネット右翼は、異様に身体性の清廉を重視する。それはタトゥーへの嫌悪感にはじまり、LGBT許容による伝統的家族観の破壊にもつながる。ネット右翼の世界観の根底にあるのは、「純潔と潔癖」である。

ジェンダフリー教育に対して狂ったように反対の声をあげ、青少年の性の乱れを声高に叫ぶ一方、女性宮家の創出が万世一系の男系男子の「国体」の毀損につながる、とのたまう男系男子論者に決まってその種のネット右翼が多いのは、「純潔と潔癖」への信仰が、彼らの中で抑えようもなく強いからである。

「ヤンキー文化」を蔑視嘲笑するワケ

つまり「純潔と潔癖」への信仰は「処女信仰」と同じ純血主義に他ならない。そしてそれは、日本以外の血統を持った在日コリアンや元在日コリアンの帰化人への蔑視と攻撃につながっていく。実に分かりやすいヘイトの構造である。

櫻井よしこの言う「凛として美しく」という、ガラス細工のような繊細性を美とし、一方で地方の「ヤンキー文化」など、一見粗野とみられる人々を蔑視嘲笑するところがその最大の特徴といえる。

そしてネット右翼を構成する主たる部分が、肉体性の衰微を隠し切れないほど高齢化した中年男性であるということも、この問題を考えるうえで重要だ。あるいは彼らネット右翼は、なまじの中産上位階級で温室育ちのために、身体性をむき出しにした「ヤンキー文化」への接点が無いことも原因と言える。

つまりネット右翼の「ヤンキー文化」への攻撃と禁忌は、自らが過去に手放した若さへの嫉妬と、「ヤンキー文化」への無条件の禁忌と反作用に他ならないのである。