部下にも頭を下げられるか
謝罪の名人は、いつでも、どこにでも謝りに行けるように準備を怠りません。経営者なら、社長室に地味なスーツやネクタイを常に用意しています。その場で土下座できるように、脱ぎやすい「ローファー」の靴を履いていくのもいいかもしれませんね。また、誰彼かまわず、謝ることができます。得意客や権力者だけでなく、部下や仕入先といった、自分よりも“弱い立場の人間”にも素直に謝るのが特徴といえるでしょう。
謝罪の名人からは、上手な謝り方を学ぶこともできます。僕なりに見つけた心得の1つが「すぐに謝れ」ということ。例えば、会社のスキャンダルが発覚した場合、問題が大きくなってから、やっと火消しに動き出す企業が多いのですが、それでは遅すぎます。週刊誌やTVで取り上げられることが予測できたら、先手を打って、マスコミの報道がかすんでしまうくらい大々的な謝罪会見を開くべきです。そうすれば、傷が浅くてすみます。
もう1つの心得が「思い切り謝れ」ということ。「そこまで謝らなくても」と思われるくらい、自分が悪かったと、ひたすら頭を下げるのです。決して他人に責任を転嫁したり、言い訳をしたりしてはいけません。「謝」という漢字は、「言葉で心を射る」という字です。相手の心が動くまで、謝り続けましょう。
伊達政宗のごとく死ぬ覚悟で謝る
戦国時代の武将、伊達政宗には、「豊臣秀吉のもとに白装束で謝罪に赴いた」というエピソードがありますよね。「あなたに殺されてもかまいません」という意思表示のためのパフォーマンスだったのですが、その度胸のよさと潔さが秀吉に気に入られ、政宗はかえって豊臣氏に重用されました。このように、「超一流の謝罪の名人」は、マイナスをゼロに戻すだけでなく、プラスにも転じることができるのです。
ただし、何ごとも闇雲に謝ればいいというわけではありません。謝罪のポイントは「自分に非があるかどうか」でしょう。例えば、法廷闘争が日常茶飯事の米国人も、自らの非が明らかな場合、あっさり「I’m sorry.」と謝ります。
超一流の人はなぜ上手に謝ることができるのでしょうか? それは、志が高いからでしょう。謝罪の名人の経営者といえば、「新しいビジネスで社会を変えたい、世の中をよくしたい」といった理想を抱いている人ばかり。大義を実現するためには、眼前のトラブルの芽を早めに摘み、信用を守らなければなりません。だから、自分のプライドにこだわらず、さっさと謝罪できるのでしょう。