中学受験は「ビジネス」ではない
そう思えるのは、自分自身に成功体験があるからだ。企業から独立してフリーでコンサルをしているような人は、自身が高学歴で、今現在仕事で成功している人が多い。そういう人は、家庭教師を頼むときに必ず学習プランを出させる。いつまでにこれだけのことをすれば、これだけの成果が出るといったコミットメントを要求するのだ。
“コンサル”とは、結果を出すための道しるべを示す仕事。そうやってこれまで、自分の提案で多くの企業を成長させてきたのであろう。それと同じことを家庭教師にも求めるが、中学受験はビジネスではない。大人であれば自制心もあるし、仕事となれば多少無理をしてでもがんばるだろう。そうやって、結果を出してこられたのかもしれない。でも、小学生の子供に同じことを求めても無理だ。
精神的にまだ幼かったり、あるいは思春期に差しかかり心身ともに不安定な状態にあったりと、個人の成長差が大きい10歳~12歳。人生経験が浅く、生き抜くスキルも持ち合わせていない子供には、努力や気合だけでは乗り越えられないことがあると知ってほしい。
口癖は「○○をすれば、○○になるはず」
「○○をすれば、○○になるはず」
“コンサル父さん”の口癖だ。そういう親は、やるべきことにこだわる。「これをやらないからできない」という考え方なのだ。
だが、成績不振の原因は、やるべきことの不足ではなく、やり方が間違っていることのほうが多い。
例えば、質より量を求める親が言いがちな「もっと早く解け!」。
この言葉を浴びせられた子供は、必ず問題を読み飛ばし、字が雑になる。また「○○をいつまでにやること」という期限付きの課題の出し方をするのも、同じような結果になりやすい。
早く解こうとするあまりに、問題や設問をきちんと読まず「読み取りミス」をする。例えば国語の問題文では、登場人物の気持ちを聞く問題が多い。なかには「主人公の気持ちの変化を答えなさい」と、“気持ち”ではなく、“気持ちの変化”を聞いてくる問題もある。ところが、設問をきちんと読んでいない子は、“気持ち”という文字を見ただけで、「主人公の気持ちを書けばいいのだな」と早とちりしてしまうのだ。