そして、最後はやはり価格だが、山下氏も中山氏同様、買い時はまだ先と見る。
「今の価格は05年から07年にかけて2、3割上がったものが元に戻った状態。この春の新規分譲物件はそこまで下がっていませんでしたが、秋以降は05年水準まで下がるはず。首都圏の平均価格も4000万円までは下がると思います」
山下氏が予測する買い時は年末以降。今水面下で中小不動産会社から安く土地を買い叩いている大手不動産会社が新規に物件を供給し始めてからが狙い目だという。体力のある大手はこのところ供給を抑えて市場を静観しているが、安く土地を仕入れれば、売れる物件に絞って供給を再開するはず。土地代が下がってから計画された物件なら、そう割高な価格にはなるまいというのが山下氏の判断だ。
また、年末以降であれば、6月開始の長期優良住宅制度の認定を受けた、より長持ちする住宅が手に入るチャンスもある。09年10月1日から本格施行する住宅瑕疵担保履行法で分譲会社などが倒産しても、性能保証が担保されるようになるのも、買う側には心強い。金利の上昇懸念もないではないが、購入環境全体で考えても買い時は年末以降というわけだ。
これからは立地が生命線になる
とはいっても、価格が安くなれば、質の悪い物件も出てくる。価格同様、物件の質も二極化するのだ。建築家の碓井民朗氏によると、「かつてのマンションに松竹梅があったとしたら今は松と梅だけ。いい物件と悪い物件しかありません」。
なかには「単に安いだけの物件」(前出・中山氏)というレベルのものもあるというから、よし悪しを見る目を持たなければダメマンションを掴むことになる。
どこを見ればよいかをまとめたのが表だ。6つのポイントはいずれも建物そのもののよし悪しに関わるもの。マンション購入では、ついモデルルームの華やかさに目がいくが、チェックすべきは、もっと地味な点なのだ。
加えて、これからのマンション購入で重視すべき点は2つあると碓井氏。そのひとつは立地だ。
「駅から徒歩10分以上かかるようなら一戸建てを買いなさい。マンションなら駅前の喧騒から3分は離れ、8分以内の立地。駅から徒歩5分がベストです」
駅から徒歩5分のマンションなら、売りやすく、貸しやすい。不安定なこの時代、買うのであれば、そうした将来に備えられる物件にすべきだというのだ。
老後を考えて選ぶという視点も重要だ。
「ローンは払い終わったとしても、管理費、修繕積立金は住んでいる限り払うもの。厚生年金をフルにもらっても、老後資金に不足が出る時代に、月に数万円を払い続けられるのか。住まいは老後を考えて選ぶべきです」
幸い、物件価格が下がりきる、いわゆる買い時までにはまだ時間がある。見る目を養い、資金計画を練り上げ、準備をする余裕は十分あるはず。この時間を生かし、買い時に備えたいものである。
※すべて雑誌掲載当時