買い時はまだ! 底値を見極めるコツ

08年秋以降、不動産・建設会社の倒産、経営不安のニュースが相次いでいる。マンションは売れず、09年4月の首都圏の契約率は64.7%と、好不調の目安となる70%を2カ月ぶりに割り込んだ。

だが、買う側からすれば1000万円単位での値引きやアウトレットマンション登場などといったニュースに、安く買えるのでは、という期待が膨らむ。では、本当にマンション価格は下がったのか?

マンション価値は下がりきっていない
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マンション価値は下がりきっていない

図は2004年から09年までの四半期ごとの、首都圏におけるマンション価格の推移。ぱっと見たところ、残念ながら、巷で耳にするほどの急激な価格下落は見てとれない。07年以前と比べると、高止まりといってもいい水準だ。

東京カンテイ市場調査部の中山登志朗氏によると、高止まりの要因は単純だ。

「値引きする物件が増えているのは確か。ただ一方、値引きせず、当初の計画通りでも売れる物件があります。そのため、平均では高止まりという結果なのです」

また、最近の値引きはモデルルームなどで個別交渉により行われることが多く、統計に反映されない場合も増えているという。高値でも売れる物件の価格はそのままデータに反映され、値下げ物件の値下げ部分は反映されない結果、実際の価格とは乖離してしまうというのだ。

専有面積の狭い物件が増えている、立地条件の悪い物件が減少したなど、ほかの要因はいくつか想定されるが、明らかなことはマンション価格は全体ではなく、限定的にしか下がっていないということ。

「今、値下げをしている物件はマンションの価値と価格がずれている物件です。ですから、本当は適正な価格に修正されているというべき。もちろん地価は下がっていますから、今後全体的に価格が下がる傾向にはあります。ただ、価値と価格が見合った物件が販売されるまでには、まだ時間がかかるでしょう」(中山氏)

首都圏の平均的な100戸前後のマンションでは用地買収から引き渡しまでに1年以上はかかる。戸数が多くなれば、3年以上にわたる物件も少なくないため、現在の地価が反映された物件が市場に出始めるのは、早くても半年以上後。となると、単に価格だけで見るならば、1年程度は待ってもいいのかもしれない。

4要素のバランスで購入環境のよし悪しが決まる
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4要素のバランスで購入環境のよし悪しが決まる

ところで、住宅購入には価格以外の購入環境も大事なポイントだ。その要件をまとめたのが菱形の図。住宅ジャーナリストの山下和之氏はこう語る。

「価格、金利、税制、市場という4条件のバランスがいい時期が客観的な買い時。最近では1999年から00年にかけてが低金利、低価格でローン控除が大きいなど、条件が揃った買い時でした。09年はその環境に近づきつつあります」

まず金利だが、99年に比べると、現在の都市銀行の住宅ローン変動金利2.475%は幾分高めだが、優遇措置が一般化したため、実質的な金利は今のほうが低い計算になる、と山下氏。1%を切る金利での融資もありえる今のほうが99年よりはるかに有利といってよい。

税制面では住宅取得資金贈与の特例が09年、10年に限って500万円拡大され、610万円まで非課税に。住宅ローン控除も、一般の住宅が最大額500万円まで控除されるのは09、10年の2年間なので、今年、来年が税制面ではお得な年ということになる。

市場で見ると、09年の供給数は99年の約半分と数的には振るわない。しかし、今の経済状況下で住宅購入を考えられる人はそう多くなく、需給バランスでいえば圧倒的な買い手有利は揺るがない。