「人気商品」に飛びつくのは危険

投資信託の残高が急減している。2008年8月には資産残高70兆円を超えていた契約型公募投信だが、09年4月末には20兆円近く資産が目減りした。

投信離れが進む中、最近、資金が流入しているのが高金利の債券に投資する投資信託、なかでも、北米のハイ・イールド債投信だ。ハイ・イールド債というのは信用格付けが低く、利回りが高い債券のこと。例えば、野村証券が09年1月に販売を始めた「野村米国ハイ・イールド債券投信(通貨選択型)」は売れ行きが好調で、販売を一時停止したほどだ(販売残高は約4600億円)。

もう一つ注目を集めているのが環境をテーマにした投信やETF(上場投資信託)。例えば、風力発電など再生可能エネルギー企業株などに投資する投信や、環境事業を手がける企業の株式で構成する株価指数に連動するETFだ。

しかし、こうした人気商品や注目商品に飛びつくのは得策ではない。例えば、低格付けの債券や新興国の高金利債券に投資する投信の利回りは高いが、ブラジルレアルやトルコリラといった新興国の通貨は変動が激しい。通貨が円に対して下落する(円高外貨安)になると、為替差損が出て基準価額が下がる可能性がある。また、環境関連の投信は以前にもブームになったことがあるが、必ずしもいい成績をあげているわけではない。

このほか、リスク限定型投信のように、複雑な条件がついているものも避けるべきだ。この投信は、例えば「日経平均株価が一定の範囲内にある間は元本が保証される」といった条件がつく一方で、「スタート時の株価より30%以上下落すると、その後は元本が保証されない」といった条件もつけられている。08年秋には株価が急落したため、元本が保証される範囲をあっさり割り込んでしまった。今後同じことが起これば、投資したお金が大きく減ってしまうこともある。

では、どのような投信であれば、長期でじっくり保有できるのだろうか。ここで大切なのは、資産形成のコア(中核)になる投信と、プラスαで持つべき投信を分けて考えることだ。コアとなる投資を行ううえでは「低コスト」「分散」「長期」が3つのキーワードだ。毎年確実に差し引かれる保有コスト(信託報酬)が低く、幅広い銘柄に分散されていること。そして、一時的な流行り廃りがなく長期的に保有できることがとても大切だ。この3つを満たしているのが、パッシブ運用の投信。つまり、インデックスファンドやETFだ。

投信は大きく分けると2つのタイプがある。市場動向と同じ値動き、運用成果を目指す「パッシブ運用」の投信と、市場平均以上の運用成績を目指す「アクティブ運用」の投信だ。

パッシブ運用のうち、特定の指数(インデックス)と同じ値動き・収益を目指すのがインデックスファンド。例えば、TOPIX(東証株価指数)や日経平均株価に連動する投信などがこれにあたる。いわば、日本の株式市場全体に投資するイメージだ。

いっぽうのアクティブファンドは、割安な株や成長性の高い有望な会社などを選んで投資を行い、インデックスを上回る運用成績をあげることを目標にしている。銀行や証券会社の窓口などで熱心に勧められるのはこの投信だ。

では、なぜアクティブ運用の投信ではなく、パッシブ運用の投信を資産形成のコアにするべきなのだろうか。それは、様々なデータを見ると、長期的にインデックスファンドに勝てるアクティブファンドは少数だという「結果」が出ているからだ。