――選手のトレーニングに対する知識や思考のレベルを高めることも、監督の大切な仕事なんですね。

野球選手って現役を終えても、まだ人生半分じゃないですか。では残りの半分をどう生きるかと考えたときに、強いチームにいた人、それも自分を成長させて強くなる体験を持っている、勝ち方を知っている人というのは、監督やコーチとしてのセカンドキャリアが開けるんです。ホークスが強くなるということは、今の選手の将来をつくることにもつながるのです。

ホークスの選手たちは、現役を引退した後、いろんなところで勉強し、あちこちで強いチームをつくるでしょう。その強いチーム同士が戦うようになっていけば、日本のプロ野球がより魅力的なものになっていくことでしょう。私はホークスで監督をさせてもらっていい思いをさせてもらっているので、「次の時代もまたおまえたちの時代だよ」と言えるものをつくってあげられたらと思います。

「絶対勝てる」と、繰り返し語りかけ

――18年、ペナントレースを2位で終えてから、CSまでのチームの雰囲気はどうつくりましたか。

フィジカルをベストなコンディションに持っていく方法についてはトレーナーやコーチとともに考えてうまくつくることはできたのですが、最後に重要になるのはメンタルです。選手たちが、「悔しい。俺たちは、このCSをなんとかして勝って、日本一になるんだ」という思いを強く持たなければ、どんなに強くても勝てないんです。弱気だけは、絶対に表に出してはいけない。私も、「絶対勝てるんだぞ」「日本一になれるんだぞ」「俺たちにはそれだけの力があるんだ」という想いは繰り返し選手に語りかけました。

8月に、若手、ベテラン選手とそれぞれ食事会をしたのですが、選手から「残り40勝9敗でいきましょう」「みんなで力を合わせて、1つになって頑張りましょう」といった言葉を聞けて、すごく嬉しかったですね。「あぁ、こいつらも同じ気持ちで明日から戦ってくれるんだ」と。

ただ、選手のメンタルケアについては、就任以来、常に試行錯誤しているのが実情です。チーム状況や選手の年齢層、順位などで、やり方は大きく変えないといけないかもしれないですし、“正解”はないのかな、と思います。昨シーズンのように食事会で気持ちをぶつけ合うことがよいときもあるでしょうし、そうではないときもあるかもしれません。日々悩みながらですが、選手やコーチはそれによく応えてくれていると感謝しています。