今の子たちは、声がけで変わる

――工藤監督の現役時代と今とでは、教え方も違うと思います。選手に教えるときに、伝えるコツはありますか。

昔は、「つべこべ言わずに言われた通りに練習しろ」という指導でしたよね。反論なんかしたら練習を倍に増やされた。ただ、意味がわからずにやっていたことでも、「あぁ、あのときにやってたから、よかったんだ」って思えることがあるんです。やるかやらないかで言えば、やらなければ絶対に強くならない。強くなった者が勝つことははっきりしている世界なので。でも、トレーニングの効果が出るのってすごく先なんですよ。何年も先だったりする。ですので「何のためにやるんだろう」と疑問を持ちながら取り組むよりは、選手もその意味を理解してからやったほうがいい。そのため、理論や目的を伝えるように心がけています。

――工藤監督は選手との距離が近いと思います。それが特に若い選手にとってはいい気がします。

上の世代の監督さんはドンと構えて、威厳があって、無言で選手を動かす力があったと思うんです。でも今の子たちを考えると、それだけではダメかなと思いますね。やはり「ちゃんと見ているよ」ということを伝えてあげて、「頑張れよ」と一言声をかけるだけで、モチベーションも上がるし、変わっていける子が多いと思いますね。

コミュニケーションをはじめとして、昨シーズンは、日々いろんなことを悩み、考え抜きましたが、日本一のときの選手の笑顔を見て本当にホッとしました。この苦悩はずっと続くものですが、監督業とはそういうものだと思っています。選手だけでなくたくさんの人が支えてくれていることに、感謝ですね。

工藤公康(くどう・きみやす)
ソフトバンク監督
1963年生まれ。愛知県出身。名古屋電気高から82年ドラフト6位で西武に入団。左のエースとして活躍。ダイエー、巨人でも日本一を経験。横浜を経て、2010年西武を最後に現役引退。野球解説者を経て、15年から福岡ソフトバンクホークスの監督に就任。
(構成=嶺 竜一 撮影=藤原武史 写真=時事)
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