「1カ月に1人」でも中小企業経営者に会いに行く
では、シニア世代に求められるのはどんなポイントなのか。1つは、明確に企業に貢献できる、つまりは「収益を上げられる人材」かどうかだ。
「リタイアを見越してソフトランディングを図ろうとしている人。そんな転職を考えている人は、経営者からすればその時点で『さよなら』。いい条件を引き出せるかどうかは、自分がどれだけ企業の利益に貢献できるかを明示できるか次第。それはビジネスにおいて当たり前でしょう」(酒井氏)
酒井氏はこんなケースを紹介する。大手商社の60代社員が、取引先のメーカーに仕事ぶりを認められ、リタイア後に営業部長として請われ再就職。その後、親会社の社長に見込まれ、あれよあれよという間に子会社の社長に上りつめてしまった。
また大手化粧品会社で中国のマーケティングを担当していた50代社員が、経営陣の交代によって社風が変わったと会社に見切りをつけて、異業種の他社に自らプレゼン資料を作って持ち込み、好条件で転職した。「彼は今その企業で役員になっています」(同)。
酒井氏は、さらにシニア、シニア予備軍のサラリーマンの振る舞いについてこうアドバイスする。
「同僚と夜、居酒屋で愚痴をいう時間があるなら、中小企業の経営者に会いに行くことです。1カ月に1人でいいから経営の指南を受けたり、話をしたりすることを勧めます。中小企業の、これはと思う賢い経営者とつながっておく。キャリアを積んだシニアなら、1度は会ってくれます。今はセミナーや講演会だったり、SNSでもそういう機会は転がっている。そして、会うときは常に自分が何者かを示す『面接』の場だと意識しておくことです」
日頃から常に自分が試されているという意識こそが、シニアの転職を成功させるポイントだということだ。