横浜市教員は「1日12時間労働」が通常
図表7、図表8では、残業時間、サービス残業率の調査結果を業種別、職種別のマップにしてみました。
これを見ると、また別のことがわかります。残業時間の多い運輸業・郵便業ですが、それらの業種は比較的、残業代は支払われていることがわかります。そして右下にくるグループは、残業時間は平均するとさほど多くないですが、残業代が支払われない、つまり「残業した場合はサービス残業になる割合」が高い業種・職種です。業種では教育・学習支援業、宿泊・飲食業、職種では講師・インストラクター、幼稚園教諭・保育士など、人に直接関わる仕事にサービス残業率が高いという特徴が見えてきました。これらの職種は、仕事が属人的(ある業務を特定の人が担当し、その人にしかやり方がわからない状態)になることも多く、ひとたび業務過多に陥(おちい)ると、残業代なしで多くの労働が発生してしまう危険性が高そうです。
とりわけ厳しいのは、教育にまつわる仕事です。なぜなら「子どもの将来のため」という「パブリックミッション」を帯びている仕事であり、子どもの幸せを思うあまりどうしても労働時間が長くなってしまう傾向があります。教育や保育などの現場では、子どものためを思えばどこまでも仕事を作れてしまいます。この献身性と仕事の無限性こそが、労働時間を長くしてしまう理由のひとつです。
実際横浜市教育委員会と中原淳研究室が2017年に行った調査によると、横浜市の教員の労働時間は、1日あたり11時間42分でした(直近3日間の平均)。また、1日あたりの労働時間が12時間以上の教員も、全体の42.0パーセントいました。極めて厳しい調査結果です。横浜市のみならず全国の教育委員会、学校でこの事態の改善のために様々な試みをしているところです。