1位が運輸、2位が建設、3位が情報通信

見ての通り、残業をしている人だけに限れば数字が増えるのです。例えば運輸業・郵便業は平均37.4時間、建設業は29.8時間。人によっては、これらの数字がより実感をもって受け止められるかもしれませんね。

「うちの上司はもっと残業している」という声も聞こえてきそうですが、先ほどのデータは、役職のない一般従業員だけのものです。残業をしている上司層(主任クラス以上)を対象にした調査(図表3)では1位は運輸業、郵便業、2位が建設業、3位が不動産業、物品賃貸業となり、現場の部下たちが帰った後にもう一仕事する管理職たちの姿が浮き彫りになります。さらに部下に比べて上司の残業の比率が高い業種をピックアップしてみると、医療・介護・福祉や金融業・保険業、教育、学習支援業などがあがってきました。これらの業種では、マネジャーたちが部下の約1.5倍も残業しているようです。

明らかになった「サービス残業」の実態

Bさん「私は家に仕事を持ち帰って、子どもが寝た後にやることも多いです。これってサービス残業ですよね? サービス残業の実態はどうなってますか?」

Bさん、ありがとうございます。確かに、持ち帰りの仕事をやむなくしている人も少なくないですよね。

社会では、残業代が支払われる残業だけでなく、違法ではありますが実際には残業代がつかない「サービス残業」が横行していることもまた事実です。Bさんのように、やむなく仕事を持ち帰っている方も少なくないでしょう。従来のこの手の調査では、企業の人事部を通して従業員に質問紙を送付していたため、「サービス残業」の実態はあまりわかっていませんでした。私たちは残業問題の真実を把握するため、敢えて「企業を通さず」調査を行いました。それにより、企業を通しての調査では難しい、サービス残業についての設問にもしっかりと答えてもらうことができました。

いったい、サービス残業が多いのはどんな仕事でしょうか。これもまずは、皆さん予想してみてください。

調査の結果、残業時間の中でもサービス残業の割合が多い業種として浮かび上がったのが、教育・学習支援業、不動産業、物品賃貸業、宿泊・飲食サービス業でした(図表4)。

教育・学習支援といっても、今回の調査に公務員は含まれていないため、主に民間の学習塾などがあたります。教育事業に多いのは、授業前後に個人指導をしても、時間外業務、残業とみなされないケースです。ちなみに、幼稚園教諭や保育士、介護福祉士・ヘルパーなどの、人間に直接関わる職種は、残業時間自体は長くないものの、サービス残業率が高いです。これらの職種はいずれも離職率が高いのですが、サービス残業が多いことも一因となっている可能性があります。