【帰宅後の食卓】相手の心に一歩踏み込んでねぎらおう

夫婦連れ添って、20年、30年と経っていくと、日常生活が次第にマンネリ化して、会話を交わすことも少なくなってくる。気を利かせたつもりで、食卓を囲みながら「きょうの料理、おいしいね」と夫がいったところで、妻は「そう……」とつれない返事。後は、お互いに黙々と食事を摂ることに。

そこで妻の立場から助言するのが村松さんで、「ただ単に『おいしい』といっただけでは気持ちが伝わりません。おいしいのなら、もっと具体的に表現したほうがいいでしょう。この場合ですと、『この里芋の煮物はボクの口に合って、とてもおいしいよ』といったように」と話す。

もう一歩、相手の心に踏み込んで話しかけることを勧めるのが野口さんである。

「1年・365日、奥さんは飽きがこないように献立を考えています。それを何十年と続けてきたのは、大変なこと。その苦労を推し量って、『毎日、献立を考えるって、面倒くさいでしょう。本当にありがとう』っていえば、『この人は私のことを理解してくれている』と思ってもらえます。そうやって心が通じ合うことを、私は『溶け合う』と呼んでいます」

最後に談慶さんが、夫婦の間の沈黙を逆手に取る“裏ワザ”を教えてくれた。「ぶっちゃけて『夫婦っていいよな。黙っていても意思疎通できるんだからさ。会社じゃあ、こうはいかないよ』といってしまいます。『馬鹿なことをいっているんじゃないわよ。でも、あなたも大変ね』と労ってくれて、和やかな雰囲気になるはずですよ」という。

立川談慶
落語立川流真打ち。91年、立川談志18番目の弟子として入門。2000年に二つ目、05年に真打ちに。数多くの独演会を行う。『大事なことはすべて立川談志に教わった』『慶応卒の落語家が教える「また会いたい」と思わせる気づかい』など著書多数。
 

野口 敏
グッドコミュニケーション代表取締役
1959年生まれ。関西大学卒業後、きもの専門店に入社。1万人以上の女性のお客さまに接し、心を掴む話し方に開眼。コミュニケーションスクール「TALK&トーク話し方教室」を主宰。
 

村松加王里
司会・スピーチコーディネーター
静岡県出身。静岡第一テレビにて朝番組を担当。その後、NHKや各民放のレポーターに。「話し方と伝え方」セミナーの講師としても定評がある。著書に『しゃべらない会話術。』など。
 
(写真=iStock.com 撮影=熊谷武二、南雲一男)
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