提言5 民間ブローカーを排除、政府主導の受け入れ態勢をつくれ
韓国では、研修就業制度の時代、民間事業者・ブローカーにより、不正が横行したことの反省から、送出国との間で二国間協定(MOU)を締結し、雇用労働部が主管して、韓国語教育から帰国までの全プロセスを運営している。これにより、プロセスが透明化し不正の減少につながっている。
また労働者の求職コストは、日本の1割から2割程度であり、ブローカーに借金をする必要がないだけでなく、事業主の求人・管理コストの削減にもつながっている。このことが評価され、2011年に「国連公共行政大賞」の受賞につながった。また2017年には、世界銀行から、「優れた情報アクセス」と高く評価されている。
他方、日本の新制度では、悪質なブローカーや高額な保証金を排除するとしているが、実効性には疑問が残る。短期的には、民業圧迫や公的機関の非効率性などに対する懸念から公的システムの導入は難しいと思われるが、長期的には、出入国在留管理庁から厚生労働省の主管に移し、透明性が高く、低コストの政府主導型の受け入れシステムとして「グローバル・ハローワーク」を構築すべきである。
現在、アジアにおいて経済成長と少子高齢化が進むなかで、外国人労働者争奪戦時代が起きている。上から目線の「外国人労働者を受け入れてやる」という姿勢では、韓国や台湾の後塵を拝すことは目に見えている。今後、日本が少子高齢化の中で、経済成長を持続させるとともに、日本人と外国人が共生できる社会を作っていくためには、多文化共生を基本に置いた持続可能な外国人労働者受け入れ政策への転換を進め、そのためのロードマップを策定していくことが求められる。
福島大学経済経営学教授
1963年生まれ、慶應義塾大学大学院博士課程・単位取得退学、専門は開発経済学,アジア経済論。著作に、「韓国の外国人労働者受け入れ政策」(高橋信弘編『グローバル化の光と影』、晃洋書房, 2018年)、「アジアにおける国際移民」 (朱永浩編『アジア共同体構想と地域協力の展開』文眞堂, 2018年)などがある。