「そんなにイキイキしないとダメですか?」

【山田】そもそも、「そんなに好きなことをやらなきゃダメなの?」という気持ちが僕にはあります。よく言うお決まりの話で、僕の中ではもはや漫談化してるんですが、「そんなにイキイキしとかなあかんかね?」っていう。

【田中】「好きなことを仕事にする」というのは最近の流行りでもありますね。

【山田】もちろん理想としてはいいと思いますが、かといって、自分のやりたいこと、好きなことが仕事になっている状態じゃなかったら、もう意味がないとか、憐れでかわいそうな人だと思われる風潮が気持ち悪いんです。そんなわけないじゃないですか。

【田中】仕事に期待しすぎなんじゃないかと思いますね。仕事は仕事で割り切って、それ以外の時間で好きなことする、みたいな感じで全然いいと思います。

【山田】ええ。「なに主人公ぶってるんだ?」というかね。「もっとエキストラ感出していけよ」っていう思いはあります。

いつまでも「ヒーロー」ではいられない

【田中】もう少し地に足をつけて生きていこうよ、という意味合いでしょうか。

【山田】自分で自分を諦めてあげる、ということが、おじさんが生きていく上では大事かもしれませんね。ここまで生きてきたら、できることとできないことって、割とはっきりしているでしょう。いつまでも『少年ジャンプ』のヒーローみたいな発想でやっていると、結局、自分がしんどいだけだと思うんです。朝起きたら、ベッドから飛び出して、カーテンをシャーッて開けて、「今日もふつふつと湧き上がる衝動に命じられるままに僕は外に飛び出していくんだ!」って、そんなん無理ですよ(笑)。

【田中】ええ(笑)。正直、気持ち悪いと思います。でも、これこそが新しい生き方だって勧めるインフルエンサーがいるんですよ。

【山田】「好きなことを仕事にする」みたいなフレーズは、今でも肯定的に受け入れられてるんですか?

【田中】そうやって煽って、小銭を稼いでいる人がいるって感じですよね。

【山田】誰が言い出したんですか、それ。いるんでしょ? 悪い奴が(笑)。